発達障害


個別支援 発達障害発達障害者支援法によると、発達障害は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学
習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢におい
て発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

また、それぞれの障害を文部科学省では、以下のリンクで示すように定義しています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

しかし、現実には、図で示すように、それぞれの発達障害は重さなりあっていることもよくあります。

この部屋で「発達障害」という場合、周囲からの刺激や情報の取り込みとその処理の仕方が独特で、そのために一般般的な環境や社会のルールに居心地の悪さや困難を感じる個性を指すと考えています。

ですから、ここでは、発達障害を個性が強いために、学校などで苦戦しやすいことだと考えます。その子どもたちへの支援方法、指導法などについて、事例を材料にお伝えします。それを通して、そこに一貫して流れる支援・指導 の姿勢などについて、ご理解いただけたらと考えています。なぜなら、「発達障害」で括られる子どもたちの個性は、あまりに一人ひとりが違います。それだけ に、個々人の個性、特徴、能力バランスに合わせていくことが重要なのです。

ここで合わせていくというのは、これらの子どもを環境に適応できるように指導していくだけではありません。社会環境、学校環境、生活環境を、個性豊かな彼ら、彼女らに合わせていく必要のあるのです。そのことについてもお伝えできればと願っています。

発達障害

こだわりが強く、他の子の気持ちがわからない子への指導

tetubou_k広汎性発達障害の傾向の男子です。自分の考えにこだわり、ルールや相手の気持ちを説明しても納得しません。そのため、トラブルが起きても謝罪することができません。

◆どうしてそうなるの?

広汎性発達障害の傾向を持つ子どもは基本的な傾向として「自分の言動は置いておいて相手の言動に対して”つっこみを入れる”ことや、被害的に受け取るところ」があります。例えば、”自分も出来ていないのに相手の失敗をしつこく指摘する”、”過剰な自慢話から離れようとした相手を「無視した」と非難する”などです。トラブルが起こったとき、謝るどころかますます頑なになり、自分の理屈で言い訳をしたり、そのトラブルに関係のない出来事まで話し出したりしてしまい、話がどんどんそれていってしまった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

それだけでなく、固まって何も話さなくなってしまったり、大声を出したり泣きわめいたり暴れたり逃げ出したりしてしまう子どももいます。そのような様子に大人の側も反抗的と受け取ってしまったり、思った方向に進まない話に感情的に揺さぶられたりでつい怒りたくなってしまいます。

◆興奮がおさまってから話をしましょう

こういう状態はどのように受け取ったらよいのでしょう?

広汎性発達障害の傾向を持つ子どもは、基本的に自分の言動に対して意識をしていない分悪いと思っていないところがあります。そのような傾向を持っていますから、自分にとって意識していないこと(自分の悪かったところ)を指摘されると混乱してしまいます。いわゆる”パニック(興奮)”です。パニックとは自分の中に起こった耐え難い違和感を収め、いつもの状態に回復させようとする動きです。こういう傾向を持つ子どもにとって、指摘されることは多くの場合は「自分に対する攻撃」と受け取り「防衛」にまわってしまいます。

トラブルが起きた時、ただでさえそのトラブルがなぜ起きたのか理解できず、「自分は悪くない!相手が悪い!」と思っていますから、どんなアプローチも届きません。興奮しているとき(パニックになっているとき)は、自分の考えや言い分に対する固執が普段に増して強く(防衛)なり、他者の気持ちを推測・理解することが難しく、ますます頑なになっていってしまいます。

パニックの表れ方はその子どもの性格・特性によって前述したように様々です。いずれにしてもそのような状態が見られたら”場を変え”興奮が収まるのを待ちましょう

また、トラブルになってしまった時にはその場で相手の子と冷静に話をすることは難しいです。自分は悪くないと思っているため、その場で謝る(形だけでも)ことはまず出来ないとお考えください。また、指摘されるて「自分が悪かったんだ」と思っている場合もありますが、”何かに引っかかって”納得できない場合もあります。ですから、興奮が収まってからお話を聞くことになりますが、本人のペースで言い分や気持ちを話せる場所と時間を確保してください。

また、相手の子や周りの子へのケアも大切になってきます「後であなたの話を聞くから、教室に戻っていてくれる?」など、納得し安心できるよう声をかけることも重要になります。

◆話を聞くときは、メモを一緒に作りながら

 広汎性発達障害の傾向を持つ子どもは、聴覚的な情報より、視覚的な情報を処理することの方が得意な子どもが多い事が特徴です。また、過去・現在の時間軸が分かれておらず、過去の出来事があたかもいま起こった出来事のように語られることも多いことが特徴です。

ですから、本人と話すときは、紙やホワイトボードなどを活用し、起こった出来事を時間軸に沿って整理し、出来事の流れや相手の気持ちを本人に見える形で提示することはとても重要になります。整理した時間軸に沿って⑴その子の行動や気持ち、⑵相手の行動や気持ちに分けてまとめると、本人が冷静に物事を振りかえるための援助になります。

また、前述したように、その相手との過去の出来事や自分がされたこと、自分が納得できていないことが話の中に出てくることも少なくありません。そういう場合も「今は今、過去は過去」ときちんと区切ることも振り返るための援助になります。

広汎性発達障害の子どもの多くは、場面や状況の理解が苦手です。本人が語る出来事と周囲の語る出来事を比較すると、本人がどこに引っかかっていたのかが分かったり、思わぬ勘違いや場面の読み違いをしていることが分かることがあります。このとき、つい矛盾を指摘したくなったり、指導したい気持ちになってしまいますが、その場では言わず本人の話を最後まで聴くよう注意してください。その上で、矛盾点を指摘し場面の理解を促した上で、対人関係での一般的な常識やルールを端的に指導するようにしましょう。

◆大人の考えるベストの行動を求めすぎないように

本人が直接謝れることは「ベスト」ですが、自分にも非があることを薄々感じはじめても、強いこだわりや、被害感、自己肯定感の低さから、本人が相手の子どもに”直接”謝罪することがどうしても難しい場合があります。また、大人が求める答えが返ってくることも稀なため、なかなか話が進まず長引いてしまうことも多いです。

しかし、長引いてしまうと本人の被害感が増したり、本人の中で出来事が薄れてしまったり、相手の子の本人への拒否感が強くなったりと、本人も相手も傷つきが深くなってしまいます。ときには「まずまず納得できる着地点」を見つけることも必要になる場合もあります。「一般常識的にベストな解決・終結」までいかなくとも、例えば、こちらの問いかけに対し「悪かったと思う」などの表現(頷くなど)や言葉が出てきたらそれを拾い膨らませ「着地点」に導いていかなければならない場合もあります

しかし、そうできたからと言って「これで終わり」というわけではありません。前述したように「一般的な常識やルール」を示し、本人の課題を明確にすることで、本人が自分の課題を意識しそれに向かっていけるように援助・指導し続けていかなければなりません

広汎性発達障害の事例

tetubou_k昨年アメリカ精神医学会からDSM-5が発表され、発達障害の診断基準が変更されます。小児自閉症やアスペルガー障害を含む“広汎性発達障害”とよばれていたものが、DSM-5では「自閉症スペクトラム障害」というひとつの診断名に統合されます。

自閉症は“コミュニケーション(社会性)の障害”と“行為の常同性(例えば、同じ道を通る、服を着る順番が決まっているなど)”という二点で診断されます。DSM-IVでは“コミュニケーションの障害”か“行為の常同性”のどちらかひとつが当てはまれば「広汎性発達障害」と診断されましたが、DSM-5では両方が診断の要件となっているようです。ここで問題なのは、知的障害を伴わない「高機能自閉症」では“行為の常同性”を伴わないことが多く、DSM-Ⅳでいう「特定不能の広汎性発達障害」に当てはまる場合は「発達障害」と診断されなくなる可能性があるということです。

しかし、診断上では発達障害でないとされたとしても「自閉症スペクトラム」の言葉が示すように、スペクトラム(連続体)のどこかにプロットされる子どもの生き辛さは変わるものではなく、診断名がつかなくてもその子どもに向けていく眼差しや支援は変わるものであってはならないと思います。そのようなことを踏まえて、今回は発達障害が疑われるという範疇であるいわゆる「グレーゾーン」にあたる事例を紹介します。

中学1年生の男子Aくん。中学1年生の5月ころ、担任の先生の叱責と、同級生からからかわれたことをきっかけに不登校になってしまいました。Aくんは前の日の夜は学校に行こうと準備をするが朝になると動けなくなってしまう。ご両親はそんなAくんをどのように理解してよいか分からず相談に来られました。

お話を伺う中で、Aくんのことが少しずつ分かってきました。今回の担任からの叱責の理由(集団の動きに合わせられない、一回の指示で動くことができないことがずっと見られ、担任の先生も何度言っても直らないのでつい強く怒ってしまった)、このような傾向は小学校から見られていたこと(小学校は単級であったため何とかついていけていた)、そのことで周りからからかわれることも度々あったとのこと、そのことでAくんは度々「自分はダメだ」と漏らしていたこと、幼少時のAくんのこと(あまり目が合わなかったこと、こだわりが強く手がかかったこと、以前あった嫌なことをよく覚えていてそのことを持ち出してぐずっていたこと、コミュニケーションが一方的なところがあり周りからは変わった子と受け取られていたことなど)、ご主人も子どもの頃同じような傾向を持っていたということで、「いずれは治るだろう」と特に何もしてこなかったこと、好きなことは何時間でも集中しあっという間に覚えてしまうなどなど。

この時点でAくんの現状の根底に発達障害の特性があることが疑われました。こちらとしてはAくんに会いたかったのですが、Aくんが「誰にも会いたくない」とのことでしばらくはお母さんとのカウンセリングを行いました。何回かのカウンセリングを続ける中で、実はお母さんも「この子は発達障害なのでは?」と不安に思っていたこと、その不安な思いをご主人の「僕もそんな感じだった。気にすることはない」という言葉で打ち消してきたことが語られました。その不安を吐き出すことができた頃からお母さんのAくんに対する言動が変化していったように思います。これまではAくんの学校に行く行かないという言動に一喜一憂し小言も多かったお母さんですが、「息子も辛い思いをしてきた、この特性に一緒に向き合っていかないと」という姿勢に変わってきました。お母さんの変化に伴いAくんも次第に外に出るようになり、教育センターでの相談・検査(IQ:93、ワーキングメモリーが低い、概念の般化ができない傾向がみられる)、医師の診断を受けることも可能になり、結果的に“広汎性発達障害”と診断されました。そう診断されたことで「育て方のせいではなかったこと、一緒に向き合っていくという覚悟を強く持てたこと、周囲に対して説明しやすくなったこと、今後の方向性が決まったこと」でお母さんもずいぶん楽になられたようです。Aくんも「通級学級なら行けそう」とのことで、その方向でも話が進み始めました。

担任の先生は、これまで情報として上がってこなかったため今回のことが起こるまでAくんの背景まで知らなかったとのことでした。このことをきっかけに担任の先生もすぐに理解をしてくださり、担任の先生はクラス全体で「個性」という観点からクラスで話し合う機会を持って下さり、からかった同級生には個別で話をしてくださったそうです。

夏休みもあけ二学期に入り、Aくんは学校の相談室にも足を運んでくれるようになり、何回かカウンセリングを続けるうちにAくんの思いを話してくれるようになりました。Aくんは小学5年生中頃から「自分は何をしても叱られる、自分はできない、からかわれる馬鹿にされる存在」という思いを漠然と抱き続けてきたようです。しかし何故そうなのか、何故できないのかは分からなかったようです。学習面でも、算数(加減乗除のひっ算のやり方が分からない、少数・分数が分からない)、国語(文章題は苦手)、ほかの教科でも暗記することが苦手で、「苦痛で仕方なかった」し自分に自信なんて持てなかったのだそうです。そのようなやりとりを続けているとき、Aくんは2桁の足し算引き算は暗算で出来ることが分かりました。どうやらAくんに独特の思考過程があるようで、一緒に探ってみることにしました。この頃のAくんは周囲の変化や自分の傾向への気づき(告知ではありません)を経験し、少し前向きになれてきていたので了承してくれました。算数の問題であれこれ試していくうちに、思考のスタートポイントをどこに持ってくるか、その際自分で分かりやすいような印をつけてみることで楽に問題が解けることに気がつきました。一度そのパターンが分かってしまうと一気に分数までできるようになっていきました。分数ができたときAくんが深いため息をついて机に突っ伏してしまいました。「僕はなんで今までこれが分からなかったんだろう・・・」とつぶやいた一言が忘れられません。

Aくんはずいぶん元気になり通級学級や相談室登校はできるようになったものの、教室には戻れていません。担任の先生と会うこと、休み時間にぶつかる時間帯での登校はできず、担任の先生と電話では話せるものの、直接会うことはできませんでした。Aくんやお母さんとお話をするうち、Aくんの抱く“怖さ”に行き当たりました。Aくんとそのことについて具体的に話をしていくと、叱責された時の先生の表情、その時のクラスの雰囲気、からかう同級生の表情が消えないことが分かりました。「今ではそうじゃないって分かっているんだけど、どうしても怖くなってしまう」「同級生や先生が自分に向ける表情がそうじゃないって分かれば安心できそう」という言葉を受け、ご両親・担任・副校長・養護教諭と話し合い、不安を軽減させていくステップとして、Aくんも同意のもと、相談室登校する日に場所を合わせてお母さん・カウンセラーと一緒に先生を「チラ見」するところから試してみることを確認しました。しばらく続けるとAくんも次第に慣れ、担任と挨拶、話ができるようになりました。さらに放課後登校(何時何分にここにいる、何をする、何時に終わるなどを細かく打合せ、学習だけでなく、Aくんが好きな工作も交えたものでした)へとつながり、Aくんのもう一つの居場所になっていきました。そんな中、からかった同級生2人(Bくん、Cくん)と校内で偶然会ってしまいました(本当に偶然で、体育で怪我をしたBくんをCくんが保健室へ連れて行く途中のことでした)。その時、2人から「からかってごめん」と言ってもらえたようです。

Aくんは休み休みですがクラスに入る時間も増えてきています。

 

※イラストは以下からいただいています。

サイト名 ふわふわ。り

URL http://shimizumari.com/fuwa2li

 

☆キーワード

不登校、ご両親の変化、周りの理解、消えていかない記憶、思考過程とスタートポイント