不登校

不登校

不登校は、子どもが学校に合わないことで生じるものです。子どもが学校に合わないとは、学校が子どもに合わないと言い換えてもよいでしょう。子どもを学校に合わせるだけではなく、学校を子どもに合わせるようにすることが、不登校を未然に防いでいくための最大の予防策ということになります。 ただ、不登校になってしまった結果、新しい問題が起きやすくなります。新たに問題を深刻化、複雑化させてしまうことも起きるのです。一番、問題になるのは、子ども自身が不登校を悪いことだと考え、「自分はダメだ」と思うようになることです。 問題を深刻化させないために、どうすればよいのか、問題から回復させるときに、何が必要なのか、それを支える大人たちに必要なことを伝えていきます。

不登校問題についての基本的な考え方

不登校問題の基本的スタンス

大分昔のことですが、特定の市の単位で不登校を減らしているときに、外野からよく言われたことです。

①不登校は悪いことなのか?

②減れば良いものなのか?

①への回答ですが、不登校は悪いことではありません。

②への回答ですが、現状を見る限り、不登校は減れば良いものです。

不登校に限らず、理由が不分明な欠席は、学校教育への不信任投票だと考えています。子どもの不登校の問題は、学校と子どもの関係の不調が原因で起きてくるものだからなのです。目の前の子どもに合わない教育を行っていることで、不登校になっていく問題があると考えています。

たとえば、婚姻は、両性の合意に基づいて、共に人生を歩むことを目指すものです。ですから、夫婦関係が悪いことは、不幸なことです。夫婦関係が悪いのは、夫が妻に合わないことであり、妻が夫に合わないわけです。これを関係の不調と呼びます。夫婦関係が悪いことが少なくなる方が良いに決まっています。でも、離婚は悪いことではありません。

子どもは教育を受ける権利があります。そして、その教育を受けさせる義務が、保護者や教師、学校の側にあります。これが義務教育です。憲法が明示しているのは、子どもに教育を受けられるように行政側、学校側、保護者の側が努力をすることを求めています。

一方、これまでの数万人に及ぶ不登校体験者の予後調査研究で、学校での不快な体験が不登校の契機となるのは、厳然たる事実です。学校での子ども達が追い詰められるのは、学校の友人関係の問題、学業の問題、そして、教師との関係です。そのいずれもが、子どもの人間関係を円滑にすることができない学級経営の問題であり、子どもに教えきることができていない教育の問題だと言えます。

その背後に、子どもに教える内容の問題、評価の問題、さらに受験制度を始めとする教育制度の問題や、社会が求める人材の偏狭さが進んでいる問題、子どもの保護者を支える経済的な問題、さらには、これまでの社会構造の変化で地域が子どもを育てる力が弱くなっている問題、個々人の価値が共有されきれない価値が多様化してきた時代の変化、家族の変化などなどが色濃く影響を与えているのは確かだと思います。

しかも、学校ができることには限りがあります。教育内容は、指導要領で全国で定められているもので、学校だけの努力でそれを大幅に変化させることはできません。地域の中で、地域の文化の担い手であった学校は、今も、地域のコミュニティを担う重要な一員となるべく努力を続けています。でも、地域の側の結びつきは、経済の進展に伴って極端に弱くなってきています。

子どもが自由に遊べる時間も場所も仲間の結びつきも弱くなりました。集団遊びが全国から消滅していったのは、1970年代半ばからほんの10年ほどです。子ども同士の遊びが子どもの社会性を育てていたのですが、そのベースが消えました。そして、今、目の前にいる保護者は、それ以降の時代に育ってきた世代なのです。子どもは総じて集団で活動することを苦手に感じるようになり、学校での集団での指導にも、工夫が求められています。

そして、教師は忙しくなり、教えねばならないことだけが指導要領に記載されている以上に増えました。事務仕事に費やす時間も増え、過労死もや精神疾患で休職、退職する教師も珍しくなくなっています。

それらの事情を前提として含んだ上で、それでも、学校の現場で奮闘している教師たちにお願いをしたいのです。なぜなら、不登校を始め、学校と子どもが合わない学校不適応の問題を減らすことは、学校の先生でしかできないことだからなのです。スクールカウンセラーやSSWを配置したところで、彼らには以下のことはできません。

学校の先生にしかできないこととは、次のことです。先生は子どもにとっての学級、学校を居心地のよい場にする必要があります、その中で、「学校に来た甲斐があった」「学校で昨日よりも伸びていると実感できた」体験が与えられるような授業の工夫、個別の指導・支援の工夫をしていただきたいと願っています。これが「不登校の問題を未然に防ぐ」ために重要なことになります。

そして、子ども自身の微妙な変調に敏感になっていただき、子どもの人間関係や学業面での躓きなどで予兆を感じ、早い段階からさまざまな支援、指導をしていただきたいのです。これが「問題の早期発見と早期対応」です。これがうまくいけば、不登校に至らず、それどころか、子ども自身がその後に似たような課題を乗り越えていくような力を、子どもに与える絶好の機会にすることもできます。

これらのことは、教室の中で起きていることで、この段階で関われるのは、学校の先生だけなのです。この部屋では、不登校の結果に至らないために、教師ができる手筋、構え、姿勢を数多く示していきたいと思います。

これまで、いくつもの学校、いくつかの市で、年間数百事例のコンサルテーションを行いながら、この手筋を探求し、提案してまいりました。3年間で、全市の子 どもの欠席日数を6000日、3分の2まで減少させた市もあります。1年間の準備期間を経て、不登校を1年間の取り組みで半減させた市もありました。これらは、皆、先生方のたゆまぬ努力の成果です。

先生方にも、不幸にして不登校になってしまったお子さんへの関わり方もお伝えしていきますが、これは簡単なことではありません。不登校になってしまった結果、問題をこじらせる悪循環が生じます。どれほど適切に保護者が接しても、不登校の結果どうしても避けがたい悪化、維持要因が、さまざまなレベルで同時に発生します。そのために、一度不登校となると、回復までに時間がかかる場合が少なくありません。

繰り返します。不登校は悪いことではありません。

でも、不登校が減ることはよいことです。子どもと学校の関係が良いことに越したことはないからです。不登校にならないに越したことはありません。不登校の未然防止と早期予防を徹底した学校では、精神障害の重いお子さんにも、医師の許可のもと、しっかり別室で教育支援を行うようにしています。わが国は、どれほど重い障害があっても、どれほど重い病気であっても、教育を保障する国です。世界のごく早い段階で全員就学を達成した国なのです。学校の中の不登校の子どもの数が減れば、教師一人ひとりが抱える不登校の子どもは減ります。個別支援に回れる教師の数も増えます。それだけ、丁寧な関わりを子どもに行うこともできるはずです。

もちろん、不登校となっても、別に元の学校に戻らねばならないものでもないと思います。また、不登校が継続していても、そのことがその後の人生に悪影響が及ばないのなら、それも良いかも知れません。学業面でも、それ以上に対人関係面でも豊かな人が関わることができて、生活の質が保証され、豊かな育ちが得られ、何よりも「僕はダメだ」とか、「私は役にたっていない」とか考えるようにならず、「私は私でよい」と自分のことを肯定的に考えられる強さを保ち続けることができるのなら、不登校がとくに減らなくてもよいかも知れません。

ですが、残念なことに、そのような現状にはありません。補習塾やサポート校などのオプションは昔より増えました。ありがたいことです。しかし、その教育を受けるための教育費を払う余裕がない親御さんもいます。そして、サポート校の調査によれば、私立の高校のほとんどは、中学時代に欠席の多い子どもの入学を正直お断りしたいと考えているのも現実です(このことに関する公的な調査は、弊害があるのでなされていません)。

以上のような理由で、現状である限り、不登校は減った方が良いのです。

2014年1月5日 |

 

不登校とは(1)

「不登校」の名称が、文部科学省の学校基本調査で公式に用いられるようになったのは、平成11年度(1998年度)からのことです。
「長期欠席」の理由別分類の一つとされました。
「長期欠席」とは、文部省の学校基本調査で用いられる用語で、一定以上の欠席(年間50日もしくは30日以上の欠席)を示す者を指しています。

時代を遡ると、長期欠席のデータは、1959年度からあります。
当時は年間50日以上の欠席が基準でした。
現在の「不登校」に相当する分類としては、1965年度から「学校ぎらい」の言葉で統計がとられるようになりました。
それは「心理的な理由などから登校をきらって長期欠席した者」と定義されていました。
なお、「学校ぎらい」以外の長期欠席の理由別の分類は、「病気」「経済的理由」「その他」でした。そして、平成3年度(1991年度)学校基本調査から、長期欠席の基準が年間30日以上へと改められました。

この調査での「不登校」の定義は、「なんらかの心理的・情緒的・身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)」とされました。
さらに、「欠席状態が長期に継続している理由が、学校生活上の影響、あそび、非行、無気力、不安などの情緒的混乱、意図的な拒否及びこれらの複合等であるものとする」と、不登校の具体例が明確に示されたのです。
また、平成12年度(2000年度)の調査から「病気による欠席」「その他」の分類に関し具体的な例が示されています。

現状分析は別に述べますが、 2003年度データを元に、2004年に不登校児童・生徒数の減少が報道されて以来、不登校問題は、社会問題として注目される機会が少なくなりました。
しかしながら、不登校児童生徒は、教育問題や社会問題として認知されるに相応しくないほどに、問題が減少したわけではありません。
その後に中学校の長期欠席出現率が過去最高を示したのですが、そのことすら、マスコミで報じられることも、専門雑誌に載ることも少なくなったのです。

2014年1月1日

不登校とは(2):不登校の名称はなぜ生まれてきたのか?

「児童・生徒が学校に行かない・行けない」問題の研究は第二次世界大戦前から始まります。それは、Broadwin(1932)の研究で、彼は、怠け(truancy)の亜類型としてとらえ、強迫神経症または強迫的タイプの神経症性格に起因するとしだました。
これが後の登校拒否の概念に相当すると考えられています。
これらの問題について、神経症的メカニズムを強調し、従来の怠学と精神神経症的障害とを区別したのは、米国のJohnsonら(1941)による「学校恐怖症(school phobia)」の研究です。

わが国では、高木ら(1959),佐藤(1959),鷲見ら(1960)などの行動異常児研究から始まり、「登校拒否(school refusal)」や「不登校(non-attendance at school)」に関する研究が発表されるようになりました(稲村,1994)。

その後、小林(1994)は「不登校」の関連概念を整理しました。そして、「不登校」を「登校をしていない現状,態度,症状などから理解しようとする立場から生じてきた」とし、「不登校の原因や心理機制,症状形成・経過から理解しようとする立場とは一線を画する」としました。その観点から言えば、より広義には「学校に登校しないすべての現象を指すと理解でき」るとしたのです。

これに対して、「あまりにも概念が拡散され過ぎてしまって,『長期欠席』と同義語になってしまってはナンセンスである」(若林・曽根,1992)との声もありました。
しかし、小林(1994)は「現代の不登校現象が,非行領域,怠学領域,神経症性障害領域の境界を明確に分けられない境界領域で拡大し,一般児童・生徒との境界が不分明な不登校傾向も増大」していることを指摘しました。
そして、「その状況を切りとるために『不登校』という用語の存在意義がある」としたのです。

このような論議があったのですが、その後、この「不登校」の名称が、それまで使われていた「学校ぎらい」に代わって文部科学省の学校基本調査で公式に用いられるようになったのは、平成10年度(1998年度)からのことなのです。

引用・参考文献

※Broadwin,I.T.:A contribution to the study of truancy Am.J.Orthopsychiat, 2,253-259,1932.

※Johnson,A.M.,Falstein,E.I.,Szurek,S.A. and Svendsen,M.:School phobia Am.J.Orthopsychiat.11,720-711,1941.

※佐藤修策:神経症的登校拒否行動の研究-ケース分析による 岡山中央児童相談所紀要,4,1-15,1959.

※高木隆郎・川端利彦・田村貞房・三好邦夫・前田正典・村手保子・澄川智:長欠児の精神医学的実態調査 精神医学,1,403-409,1959.

※稲村博:不登校の研究 新曜社,1994.

※若林愼一郎・曽根靖貴:「登校拒否」はいまどうなっているのか-最近のデータをもとに- 児童心理月増刊号,587,102-112,1992

*小林正幸:第10章不登校 橋口英俊・稲垣佳世子・佐々木正人・高橋惠子・やまだようこ・湯川良三(編) 児童心理学の進歩1994年版 金子書房 Pp.256-273,(1994)

※小林正幸・早川恵子・島崎由貴・齋場悠紀子・河内絵莉子・金慧昤・副島,賢和「理由別長期欠席児童生徒の出現率の推移から見る不登校問題 : 不登校問題の現状と課題」東京学芸大学教育実践研究支援センター紀要 4, 1-7, 2008-03-31

http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12038480

2014年1月2日


不登校の子どもに関わるには(1):学校での不快な体験の記憶が起こす不安があると理解する

不登校は、学校での何か不快に感じる体験があることで始まります。
早い段階で、この不快な出来事を特定し、その課題を取り除くことができれば良いのですが、現実には、その出来事が分かるまでに時間がかかることが少なくありません。
また、その課題が簡単に解決できない場合もあります。

また、実際にあった出来事がそれほどたいした問題ではなくても、その出来事で通常感じるよりも強い不快感を感じてしまうことがあります。

たとえば、これは、いじめられた体験のある子どもが、遊びの最中にちょっとした仲間はずれを理由に欠席が始まるような場合もこれに当てはまります。
あるいは、東北で起きた災害では、保護者と出会うまでに時間がかかったような場合、「嫌悪」「さみしさ」「悲しみ」「不安」「怒り」「孤独感」などを強く味わいます。
この場合も、学校生活でちょっとした仲間はずれが起きたときなどに、似たような感情が湧きあがりやすくなるのです。
ですので、そこで起きたこと以上に、特定の場面を脅威に感じて、その辛さからその場面を避けるようになります。
このことで不登校が始まる場合もあるのです。

さらに都合が悪いことに、その後、不登校が続くと、それが続いたことで、その不快感が増幅していくことも起きます。
不登校の問題の本質は、欠席が続くことで、不快感が増幅し、問題が日々深刻化していくことにあります。

このように、不登校になった子どもは、不快な体験を得たことで始まり、不快なことを思い出すことで生じる不快な感情に苛まれています。
何かを思い出したり、イメージしたりすることで起きる不快感を不安と言います。
その不安は、欠席が続くことで増大していきます。

ですから、不登校の子どもと接する上で大事なことは、子どもの不快感、とくに不安と向き合うことなのです。

このときに大事なことは、子どもが不快に感じていることを受け取りながら、不快に感じても良いとします。・・・不快に感じてしまうのは仕方がないのですから。

そのような不安を始め、さまざまな不快感が、子どものこころを支配していることを十分に理解する必要があります。
そのことを前提として関わらなければなりません。

そのときに大切なことは、関わる側が、どっしりとした安定感を持って、その不快感を受け止めることなのです。
その具体的な方法は、別に述べることにします。

2014年1月1日

 

不登校の子どもに関わるには(2):保護者は日常生活を大切にする

不登校の最初では、身体の不調を訴えることが少なくありません。
小学生で7割、中学生で5割、高校生で2割が身体の不調を訴えます。

この段階で、保護者は原因を追究し過ぎないようにします。
ストレスによって身体の不調が起きるときなどでは、本人が仮に不登校になった原因を分かっていても、語れないか、語りたくないのです。

あるいは、自分でも身体の不調や学校を嫌に感じることや元気のなさと、不快な体験とのその繋がりが分からない場合もあるので、「わけが分からない」場合もあります。

不登校は、学校で何らかの嫌なことがあったために起きて来るものです。
ですので、お子さんに「何か嫌なことがなかったのか」を尋ねる必要はあります。
しかし、きっと何かがあるはずだと、原因をずっと探り続けるのは、得策ではありません。

保護者であれば、早い段階で、次のことは伝えたいと思います。

「何がどうであれ、あなたの味方になりたい。子どものうちは、あなたを守っていきたい」

「どうも学校に行くのが嫌なように思えるので、学校に行けないのなら、学校の先生に相談に行かなきゃいけないと思っている」

「何も知らないで先生のお話を聞くだけになってしまうと、あなたを守れないかも知れない。全部を話さなくても良いけれど、話しておいた方が良いと思うことは、今のうちに話してほしい。時間が経つほど、解決が難しくなることもあるのだから」

このときに子どもがその理由を語るのならば、心情に寄り添って、じっくりと聞くように心がけます。

子どもの見えた世界をそのときには、全て受けいるようにします。何を感じ、何を考えたのかと、何が起きたのかをじっくりと分け取りながら聞きます。

それを語ったことを認め、語れたことを褒めるようにします。

ただし、何が起きたのかについては、大人の目で吟味し、客観的に理解するように努めます。

その上で、「学校の先生に何を話してほしいか、何を話してほしくないのか」を確認します。

このように語っても、お子さんが「先生には何も言う必要がない」と述べた場合は、お子さん自身は、すでに教師を助ける者にはならないと見切ってしまっていると思えます。

この場合は、そのようになるほど、孤立してきた辛さを共有し、「学校に行かないまでも、どうしていったら良いのか」を話し合うようにしましょう。

このような場合でも、本当は、どのような教師であるかどうかを見て判断するためにも、しっかりと学校側に相談をするようにします。

このとき、子どもが何を語ったのか、子どもがどのように感じ、どのように考えていたのかを正確に分けることと、保護者自身が、それをどのように考え、どのように感じているのかを分けて伝えるようにします。

そして、この段階で大事なことは、日常生活を崩さないようにすることです。不登校を叱責しないようにします。努力が足りないなどと言うことは控えます。

身体の不調があれば、医師の診断を仰ぎ、その指示に従います。
身体の不調がないようなら、昼間は勉強をさせたり、家の手伝いをさせます。外出を勧め、親友がいれば、その交遊を大切にします。来客も普段通りに応対するように勧めます。
夜はゆったりとした時間を過ごすようにします。

そして、学校に行っていない時間を、どう有意義な時間にするのかを考えるようにします。
急にそのようには考えることは難しいのですが、極端に言えば、次のように考えるように心がけていきます。

「せっかく学校に行っていないのだから、今しかできないことをしよう」

この記事は、東日本大震災先生のための電子メール相談のコラム記事をもとに構成しています。

「学校を嫌がる-初期の場合」

http://for-supporters.net/column_trauma8-8.html

2014年1月3日

不登校の子どもに関わるには(3):教師は積極的に温かく関わる

不登校に限らず、教師は欠席に敏感になる必要があります。
欠席連絡があったとしても、その日のうちに電話などで本人と連絡するようにします。
風邪であろうが、診断名の付いている病気であろうが、まずは、子どものことを心配して、電話で本人と話すようにし、暖かい言葉をかけるようにします。

不登校ではない子どもの年間平均欠席日数は、3日~4日です。
数日の欠席があれば、それは異常値です。すぐに、子どもに会うようにします。
これを徹底しただけで、市全体の長期欠席が1年間で1割~1割5分程度減ることが、いくつかの市で確かめられています。

最初の段階で、会えない場合は少ないと思います。だんだん教師や親友すらも会いたがらなくなっていきますので(このメカニズムは別に触れます)、できるだけ早く会うようにします。

もし、会えない場合は、メモでも良いので、置手紙を置いていくようにします。
最初の段階から、会うことを本人が拒絶している場合は、ひょっとするとご自分に原因があるかもしれません。
不登校経験者の調査では、2割ほどが教師との関係が問題となって不登校になっています。
ですので、最初から会えないような場合には、そのように考え、本人と関係の深い仲間の教師や管理職の協力を得る方が良いかも知れません。

家庭訪問をして、本人にかけなければならない声は次のような言葉です。

「顔を見てほっとした」「心配していたよ」「会えないと寂しいな」「会えて嬉しい」

このとき、教師は登校を促す必要はありません。

先生が子どもと会おうとすることそのものが、「学校で会いたい」ということを意味します。
この意味が分からない子どもはいません。
子どもが先生と会っている限りは、仮にしぶしぶであったとしても、少なくとも、「学校に行かねばならない」という気持ちがあることを意味しています。

そこで、教師が試みることは、子ども自身が好む活動、趣味があれば、それを30分ほど一緒に楽しむことです。

その間に、今の学校の様子や仲間の様子などを語ります。

子どもが話の中で表情を失った部分があったら、

「この話、嫌かな?」「心配になっちゃったかな?」などと、不快な感情を教師が代弁するようにします。

また、趣味などをしているときに、生き生きした表情になった瞬間を捉えて、「楽しそうだねー」「嬉しいねー」「やったね」などと、言葉にします。

不快な感情も快適な感情も、言葉にして応答していく関わりは「感情を言葉で代弁する」ことです。
これを「感情の言語化」と言います。
簡単そうですが、これは意外に難しいものです。これを上手に繰り返すことが、不安を中和していく上での重要な関わりなのです。
それを行いながら、その時間を心地よい時間にするように心がけます。

そして、もっと大事なことがあります。

子どもが再登校したときのために、学校の環境をより居心地が良いものにすることです。

そのときに、「学校で君に会えて嬉しい」と言うことです。

学校環境が居心地よくしていきます。そのことが、子どもに陰に陽に伝わり、子どもが実際に学校に来たときには、学校に来て良かった、来た甲斐があったと感じられるように学校環境、教室環境をより良好にするように工夫をするのです。

これまで、チーム仕事師は、小学校よりも長期欠席が少ない中学校を、いくつも作り上げてきました。
数年間の関わりの最終の段階では、ほぼ、全ての教師があまり意識をすることもなく、これらの関わりができるようになってきていました。

さて、先ほどの会話の中で、子どもの表情が曇った話題が、学級内の人間関係であったのだとしたら、また、そのことが推察できるのなら、その環境の調整ができるのは、教師しかいません。

中学生の不登校のきっかけの53%が友達関係の問題であるということが、これから正式発表される文部科学省の不登校の予後調査で明らかになってきています。
いじめの問題では、加害への指導は、教師にしかできないはずです。
仲間関係の問題は、人間関係の調整ですので、これは学級経営の問題であると考えることができます。
ただ、このことが明らかになったときに、先生が介入する場合では、どのような介入を行うつもりであるのかを事前に本人に伝えるようにしなければなりません。
説諭してお仕舞いというような最低の指導は、関係調整ではマイナスになります。
では、何をどうするつもりなのかは必ず本人に伝えるようにします。

一方、不登校のきっかけの31%が学業面の躓きです。
これも教師の側に、工夫と努力が求められることです。
自分自身が学業面での伸びを実感できなくなっていることが、子どもを不登校の危機に陥れると言えるでしょう。

学校の中で、安心して、楽にいられること、そして、学校で頑張ったら、そのことがしっかりと、認めてもらえるようにすること、これらは、学校の先生にしかできないことなのです。
これは、特定の子どものみならず、全ての子どもにとっても必要なことなのではないかと思います。

この記事は、東日本大震災先生のための電子メール相談のコラム記事をもとに構成しています。

「学校を嫌がる-初期の場合」

http://for-supporters.net/column_trauma8-8.html

また、以下の2冊の本は、教師の行う支援方法が網羅されています。

『学校でしかできない不登校支援と未然防止』(東洋館出版)

『不登校にしない先生・登校を支援できる先生』(明治図書)

2014年1月4日

不登校の深刻化を防ぐ:感情面の悪化を防ぐ(1)

不登校が始まると、新しく不登校を継続させるメカニズムが発生します。そのために、不登校が本格化し、問題が長期化しやすいのです。

これから、そのメカニズムを、感情面、行動面、思考面の三側面に分けて述べます。
ここでは、感情面での悪化のメカニズムを述べます。

ただ、ご注意いただきたいのは、これらは、一人の子どもの中で同時に起きることをお話している点です。
そして、それらの悪化が複合的に欠席を続けさせるように相互に悪影響を与えます。

<感情は理屈ではありませんし、考えでもありません>

感情は理屈ではありません。頭で納得できても、感情が許さないことは数多くあります。それだけ、感情の影響力は計り知れないものなのです。
感情は、脳の中でも、比較的古い脳で生まれます。古い脳で生まれるといっても、人間にとっては、人間を人間らしくする最大の特徴が感情ですし、人間の欲求をダイレクトに反映するのが感情なのです。

<感情面の悪化のメカニズム>

その感情の変化のメカニズムは、行動や思考が変化するメカニズムとまったく異なっているのです。

不登校が始まる前、ほとんどの子どもは、学校で不快な場面に出会っています。
そして、不登校が始まると、登校しようとする度に、その不快に感じた場面を思い返し、不快感を追体験します。この追体験が重なると、そこで思い返される場面で起きる不快感は強くなります。
これが感情が変化する際の基本的なメカニズムです(不快な体験の記憶の想起による不安の増大)。

それだけではありません。不快には感じていなかった場面ですら、不快に感じるようになっていくのです。
不快に感じながら、学校のさまざまな場面を思い出します。すると、その場面と不快感とが結びつくのです(不快な感情を感じる場面の般化)。

さらに、複雑なのは、感情の学習メカニズムでは、過去の類似した感情体験が、感情の学びに影響を及ぼすことも少なくないことがあります。
不登校のきっかけとなった出来事と、過去に味わったことと似た体験があったとしましょう。
そのようなときに、次ののようなことが起きやすくなるのです。
過去に感じた不快感の記憶が連想される形で、現在の不快感を強めてしまうのです(過去の類似体験の想起による不快感の増大)。

たとえば、保護者から厳しく叱責された体験があり、その後、教師の叱り方がそれと似ているような場合、その教師の叱責と親の叱責で感じた脅威とが重なります。
そのとめ、実際に、その子ども自身が叱責されたわけではなく、別の子を叱っていたのに、その教師を恐がり、嫌がるようなことがあります。
あるいは、ちょっとしたトラブルがあって、その日のうちに問題が解消したのにも関わらず、翌日から登校してこないような場合も、過去の類似の体験が、不快感を増大させてしまう場合を想定した方がよいでしょう。

このような場合では、最近に起きた出来事を思い出す度に、それよりも過去の不快感が今感じている不快感に覆いかぶさってくるのです。

不登校の最初の段階では、朝、学校に行こうとすると、当然、学校での不快な場面を思い出すわけですが、そのことで、日々、そこで感じる不快感が増大していくのです。
何かを思い出して、不快に感じることが、不快に感じる程度を強め、不快に感じる対象を広げていきます。

また、これは思考と関連しますが、欠席した結果が、新たな不快感を生み出します。
「学校に行かなければならない」と考えている場合ほど、欠席という結果を失敗と考えます。それを失敗だと考えるほど、そのことが新たに日々の不快感を強めていくのです(不登校の結果が、不快感を増大させる)。

このようにして、登校しようと思い出して感じる不安や恐怖は、最初に感じていたよりも何倍も強くなっていくのです。

以前の記事で、不登校に関わるためには「不安を始め、さまざまな不快感が、子どものこころを支配していることを十分に理解する必要があります」と述べました。
これを前提として関わらなければならないと述べたのも、この不快な感情の悪化のメカニズムを意識してのことなのです。

参考

不登校の子どもに関わるには(1):「学校での不快な体験の記憶が起こす不安があると理解する」

2014年1月10日

不登校の深刻化を防ぐ:行動面の悪化を防ぐ(1)

いったん、不登校が始まると、新しく不登校を継続させるメカニズムが発生します。そのために、不登校が本格化し、問題が長期化しやすいのです。

ここでは、そのメカニズムを、感情面、行動面、思考面の三側面に分けて述べていますが、今回は、行動面での悪化のメカニズムを述べます。

※この記事は、以下の記事の続きです。

不登校の深刻化を防ぐ:感情面の悪化を防ぐ(1)
不登校の深刻化を防ぐ:感情面の悪化を防ぐ(2)

【学校に行かない(行けない)ことが生み出すものー安堵感】

不登校になると、感情面では不快な場面を思い出す度に、不快感を味わいます。
そのために、「学校に行かない」行動が選択されます。
「今日は学校に行かない」と思い定めたときに、想像の世界で感じていた不快感は、その時点では、すっと和らいでいきます。

不快感が和らぐこと、そこで起きるのが、「今日は一日生き延びた」とでも言うような安堵感、安心感です。
日内変動と呼ばれますが、午前中登校するか否かで葛藤している段階は、元気がありません。
けれども、「もう登校しても仕方がない」となると、午後には、人が変ったように元気になることがあります。
学校がお休みの日に元気になるのも、このメカニズムによります(週内変動)。

これらは、とくに不登校の初期や、再登校を始める前後によく見られることです。
午後やお休みの日に元気になるときに作用しているのが、この安堵感、安心感なのです。

【安堵感が生み出す翌日の不登校】

この安堵感、安心感が、翌日の「学校に行かない(行けない)」行動を強めます。
つまり、翌日に学校に行く行動を妨げるように作用するのです。

「君子危うきに近寄らず」と言いますが、辛い場を避けるという学びの力は、とてつもなく強いものがあります。
動物にとって、「痛い目」にあった場所のことを忘れてしまい、その場面を避けることができなければ、自然界を生き抜くことはできません。
生死に関わる学習ですので、それだけ、行動面での学習メカニズムとしては、これは強力なものなのです。
これを「罰回避学習」と行動科学では呼びます。これを模式的に示したのが、以下の図です。


行動面の悪化メカニズム

この「罰回避学習」は、繰り返せば繰り返すほど、不登校行動を強めてしまいます。毎朝、不快な場面を思い出し、登校を葛藤するものの、結果として学校に行かないのです。
この繰り返しが、学校に行かない行動を強め、日を重ねるにつれて、不登校行動が強められ、維持させるように働くのです。

【想像して感じる不快感が強いほど、不登校は強められる】

このメカニズムは、怠学のメカニズムではありません。
学校で体験した不快な場面を思い出したときに、そこで感じる不快感が強ければ強いほど、登校しないとなると、その落差から安堵感も大きくなります。

安堵感が大きいほど、学校への行く行動にブレーキが強くかかるのです。
学校に行ったり行かなかったりするお子さんよりも、ある時期からパッタリ登校しなくなった場合ほど、不登校が長引くのは、このメカニズムによります。
学校での不快な場面で感じる不快感がギリギリまで辛いものになっていると、その段階で、学校に行かないことが強い安堵感を生み出すのです。
そのため、学校への行かなさ(行けなさ)は、最初から強烈なものになってしまうからなのです。

2014年1月24日

不登校の深刻化を防ぐ:行動面の悪化を防ぐ(2)生活空間を拡大する

◆生活空間の狭まりを防ぐ意味

不登校問題の維持、悪化の要因は、子どもの生活空間が狭まることに象徴的に示されます。
不登校の初期段階では、担任や友人と会え、放課後には一緒に遊ぶ子どもも多いようです。しかし、しだいに子どもは外出を控えるようになります。
出会う人間を制限していくのです。
これが、ここでいう「生活空間の狭まり」です。

ここでは、生活空間の狭まりのメカニズムに触れ、その解決策を考えます。
なぜなら、筆者らの研究によれば、子どもの生活空間の狭まりに働きかけることが、不登校問題では最初の段階から最後の段階まで、一貫して問題の回復に重要な役割を果たしているからなのです(小林ほか、1995)。

この研究では、複数のカウンセラーが扱ったさまざまな不登校事例60例を集め、各事例でカウンセラーの行った対応が、不登校の状態の改善にもたらす影響について調べたものです。
その結果、不登校のすべての期間で、「対人積極性」の改善が、登校行動の改善と密接に関連していることが明らかになっています。
そして、「対人積極性」がよくなるためには、生活空間を拡大させる関わりが、大きな影響力を持つことも示されたのです。
このように、不登校の最中は、生活空間の狭まりを避け、生活空間を拡大させることは、最初から最後まで重要な関わりなのです。

◆生活空間の狭まりは何をもたらすのか

さて、実際に、生活空間の狭まりは、どの程度起きるのでしょうか。
不登校体験者の追跡調査では、中学3年生時の不登校状態が、どのような不利益や苦労を生み出したのかを調べています(現代教育研究会、2001)。
この項目で、半数以上が挙げたのは、以下の三項目でした。
いちばん多かったのは、「小中学校のころ不登校であったため、生活リズムが崩れ苦労してきましたか?」で、「おおいにあった」と「少しあった」を合わせて、合計63%が苦労していたとしています。

ついで多かったのは、「学力や知識が足りず、受験や仕事などで苦労したことがある」で、58%が肯定している。また、「現在他人との関わりに不安を感じることがありますか?」では、53%が対人関係上の不安を感じるとしています。

この三項目のうち、最後の項目の「他人との関わりに不安」は、生活空間の狭まりと密接に関連すると考えられます。
そもそも、不登校は、学校を不快に感じ、それを避けることに始まります。そして、不登校では、人間関係の不調が、問題のきっかけになる場合が多いのです。
そのため、人に対する不安や緊張を感じやすくなります。対人場面で不快感を味わうと、人に対して、不安や緊張を抱きやすくなるのです。
そのために、人との関わりを避けようとします。これは、ごく自然な防衛反応なのです。

不安や緊張に限らず、一般に感情が、変化するときには、「二つの法則」が存在します。すでに、この法則は感情面の深刻化を防ぐの中で述べています。
第一の法則は、「繰り返せば繰り返すほど、そこで感じる感情が強くなる」点です。
たとえば、このことは、特定の場面で不安や恐れを感じることが繰り返されると、その場面で不安や恐れをますます強く感じるようになるということを意味します。

そして、第二の法則は、「ある特定の感情を感じている場面や状況で、別の場面や状況が同時に加えられると、別の新しい場面や状況でも、同じような感情が起きやすくなる」ことです。
これは、特定の場面での不安や緊張などの不快感が強くなると、それに似た場面での不安や緊張も強くなることを意味するのです。

感情の問題に理屈は通用しません。不快に感じれば、それを避けたくなります。
不快に感じる対象が広がれば、避ける場面が広がるので、行動範囲がより狭まるのです。
そのために、外出を控え、外出する時間を自制するようになります。このように、生活空間の狭まりがあるときには、その背景に、人に関わるときの不安や緊張があると考えてよいのです。

さて、人に関わるときの不安と、不登校の予後とは、どのような関連があるのでしょうか。先ほど述べたように、不登校体験者の半数以上が、二十歳時点で、人に関わるときに不安を感じていました。
他人との関わりに不安を感じることと、不登校体験が成人となった自分にマイナスの影響を与えている程度との関係を調べた結果もあります。

それによれば、「かつて不登校であったことが、マイナスに影響していると感じている」とした者のうち、77%が人に関わる不安を感じているとしていました。これに対して、「マイナスに影響していると感じない」とした者の場合では、現在対人不安を感じる者は33%に過ぎなかったのです。
このように、不登校問題が予後の適応に与える影響という意味でも、対人不安を軽減することが重要なのは、ここにも示されています。

◆人への不安や緊張を軽くしていくには

さて、不安や緊張を和らげるメカニズムによれば、不安や緊張を感じそうな場面で、「予想外に大丈夫だった」「安心していられた」とか、「心地よい思いをした」と感じられた体験があれば、不安や緊張が減少します。
この法則によって、不安や緊張が消える現象を、「脱感作<desensitization>」と呼びます。

人間に対する不安や緊張の場合で考えると、誰かと人間関係を持ち、その人間関係の中で、「安心していられた」とか、「心地よい思いをした」との体験を重ねれば、不安や緊張は消えるのです。人間に対する不安や緊張を軽減するには、その不安や緊張を上回る安心感や心地よさを、人間関係の中で繰り返し味わえばよいことになる。
これが、対人不安や対人緊張を取り除く際の原則なのです。

実は、カウンセリングには、不安や緊張を解除するメカニズムが、流派を問わず、構造として組み込まれています。
カウンセラーとの話し合いの中で、クライエントは不快に感じる場面を悩みとして語ります。カウンセラーとクライエントの関係の中で、カウンセラーは、さまざまな形で安心感を与えます。不安や緊張感を上回る安心感が与えられれば、クライエントの不安や緊張は軽くなるのです。

そして、カウンセリングは多くの場合、週に一度のペースで繰り返されます。クライエントは、さまざまな不快に感じる場面について語ります。カウンセラーは安心感を与えるようにし、毎週それが繰り返されます。その結果、不安や緊張が弱まり、不快に感じる場面が少なくなっていきます。
カウンセリング関係を継続するだけで、不安や緊張が軽くなっていくのは、このメカニズムによるところが大きいのです。

しかし、そこで語られる不安や緊張などの不快感が、その関係がもたらす安心感以上に強ければ、クライエントの不安や緊張は減少しません。むしろ、カウンセラーを不快に感じるようになります。
辛い体験や、問題の根深いところを語った次の面接回に、カウンセリングを休んだり、中断したりする場合はよくあります。これは、語ったときに感じた不快感を、カウンセラーが緩和しきれなかったために起こる現象なのです。

このように、相手の不安、緊張を上回る安心感を、信頼関係の中で提供することが重要なのです。これが対人不安を取り除く基本原理です。

◆生活空間の拡大で目指すこと

ですから、対人不安を軽減するために、具体的に生活空間を拡大することについて言えば、不登校の回復に当たって、学校に繋げることや、再登校を第一義に意識する必要はないのです。
ここで言う「生活空間の拡大」とは、子どもの生活空間や、子どもをめぐる対人関係を広げることです。
このとき、もちろん、生活空間や対人関係の拡大の延長線上に、学校や学級があってもよいのですが、学校を意識すると、不快感も起きやすいわけです。また、学校を意識して生活空間を広げようとすると、選ばれる空間や人間関係の範囲も狭まってしまいます。

ここで必要なのは、その外出先で「人との関わりで心地よかった」という体験を持つことなのです。
目指すのは、その生活空間の拡大や、対人関係を広げることが、子どもに「生活空間を広げた甲斐があった」と思わせる体験となるようにすることなのです。そのためには、どこかの生活空間の中に、子どもに対して「そこに居てよい」という「座布団」が用意され、誰かがその座布団を差し出せればよいのです。

そのような座布団、居場所があれば、子どもは人間関係を広げることができ、子どもの理解者が増えていきます。自宅に蟄居しているだけでは、子どもの居場所は広がりません。
たとえば、近所の子どもと遊ぶ、級友と遊ぶ、補習塾に行く、児童館に出かける、公民館に顔を出す、適応指導教室に行ってみる、サポート校に出かけるなどが、生活空間を広げることです。

筆者は、中学生でも、その親戚宅や保護者の友人宅で、ちょっとした仕事や内職を勧めることがあります。ボランティア体験を味わわせたりもします。大事なのは、その物理的な環境やシステムではないのです。
あくまでも、大事なことは、それぞれの子どもに見合った「座布団」「居場所」が、子どもの出かけて行く先にできることなのです。

そのような場を探し、必要なら一緒に出かけて行き、居心地の良い場でそこに出かけて行った甲斐があったと思える体験を与えることが、支援をしていく者に必要なのです。
適応指導教室などの場も、このような場の一つとして考える必要がありますし、学校の中で別室登校する場合にも、別室登校の場は、そのような場になる必要があるのです。

[文献]

◆小林正幸・田中陽子・神村栄一「不登校の改善に関する研究――登校行動改善の規定要因」『カウンセリング研究』、28、131―142、1995

◆現代教育研究会(代表:森田洋司)『不登校に関する実態調査――平成五年度不登校生徒追跡調査報告書』文部科学省、2001

2014年1月25日

不登校支援における別室の活用

【別室登校とは】

学校の中で、教室での適応が難しい場合に、教室とは別の場所で学習をさせる場合があります。
情動コントロールの問題で、クールダウンさせるためであったり、発達障害があるために集団での学習に困難があったりする場合などにも別室を用います。
このように、教室に入ることが難しいものの、登校している場合などに、子どもの教育権を確保するために別室での学習を行うことを別室登校と呼びます。

このように、別室登校の場として、相談室や保健室が活用されることが多いのですが、不登校の子どもの登校支援の目的の場合の活用についてここでは述べます。
この場合対象になるのは、不登校になりかかりの場合と、在宅の段階から学校に再挑戦させていく場合です。
両者にも関わりは微妙に異なりますが、それ以上に非行傾向が見られるような場合は、関わり方が異なってきます。
それらを同じ部屋にすると、互いに悪影響を与える場合が多いので、これとは別の部屋を用いる方が良いと思います。

【不登校の別室登校で求められること】

不登校とは、子どもが学校に合わないことですし、学校が子どもに合わないことです。そのほとんどの場合、学校での仲間や教師との人間関係上の躓きや、学習上の躓きによります。不登校になった結果、学校の場をより不快に感じています。想像して不快に感じることで不安が高まってしまっています。

そこで、不登校傾向の段階や、不登校から回復途中の段階で、相談室に登校している子どもに必要なのは、「1.安心・安全な場で人の中で居心地が良いと思える体験をもたせる」「2.教室との架け橋になる」「3.子どもの人生を応援する」の三点です。

1.安心・安全な場で人の中で居心地が良いと思える体験をもたせること

とかく、教室に歩みを進めることを急ぎがちですが、別室登校の場を居心地の良い場にすることが、まず、第一に必要です。
その部屋を管理する相談員や養護教諭と良好な関係を結ぶことはもちろんですが、子どもがその場にいて、ゆったりとしていられ、自由に話せる雰囲気が必要です。

2.教室との架け橋の場になる

学校復帰の成否は、復帰する教室が十分に安心で安全な場であるのかが実感できるかによります。そこを工夫します。
最近では、少なくなったと信じたいですが、教師が別室の場を、「あそこでは甘やかしているから」とか「居心地がよいから」などと語る声をきくことがあります。
これは教室にいる教師が言ってはならないセリフです。

これは、返す刀で「自分の教室は居心地が悪い」ということを告白しているようなものです。
学校の教室では、子どもの甘えが許されないということを言っているのです。
全ての子どもにとって居心地のよい、安心、安全に思えるようにしていくことは、不登校を未然に防止する上でもとくに重要なことです。
しかし、復帰の段階で、このことが果たされなければなりません。
そして、安心できて、居心地が良い場であることが、別室にいる子どもに十分に伝わなければならないのです。

担任の先生は、時間に隙間ができたら、別室に顔を出し、「自分のクラスの大事な一員」として、暖かい声かけと関わりをします。
別室の担当者は、子どもの日々の様子をこまめに担任に伝えす。
ときには、その子ども向けに担任や教科担任から「とっておきの授業」を行ってもらいます。
本人が会いたい、本人が会ってもよいと思える友だちには、休み時間に訪れて接する機会を設け、そこで楽しい時間を持たせます。

3.子どもの人生を応援すること

これは、子どもが自信の持てることを増やし、苦手を克服するのを手伝うことを指します。
また、子どもの不安や怒りなどの不快感の表現を言葉にすることを手伝います。
その上で、その問題の解決方法を一緒に考えます。

そのことを通して、自分で行うことができたという成功体験を与えて自信を育みながら、人と付き合っていく力を育むように心がけます。
教室への入室も、その後生きていく上での力を得る機会と捉えて支援していくのです。

2014年1月14日

家庭で荒れている不登校の中学生男子

中学生男子、不登校です。家庭で荒れているようです(暴言・暴力)。

学校としては、どのように関われるでしょうか?学校ではおとなしく真面目な子どもだったのですが。

◆家庭内暴力は、学校が直接介入することが難しい問題です。

もともとおとなしく真面目なお子さんとのことで、親御さん自身、子どもの変化に戸惑い、混乱されていることだろうと思います。学校の先生には、細かいご家庭の事情を語りにくいこともあると思います。また、お子さんも自分の家庭の様子を、先生が把握しているのでは、先生に会うのが辛く感じるようになるかも知れません。

そこで、こども家庭支援センターや児童相談所などの専門家に親御さんをつなぐことを視野に入れていただければと思います。
家庭内暴力が長期化、慢性化している場合には、より対応が困難になります。また、ある種の精神疾患の場合、その初期症状で暴言、暴力が増える場合がありますので、医療機関の専門家も嘱託で勤務している専門機関に支援を依頼することが必要かも知れません。

◆家庭内暴力への対応における基本方針は、暴言・暴力を助長しないようにすることです。

また、本人に関わる前には、本人にとってどのようなことが刺激になるのかを把握し、暴力を誘発するような刺激を不用意に与えないようにします。
たとえば、 皮肉やいやみ、突き放す発言などが怒りを誘発する刺激となります。そこで、どのようなことを言うと怒り出すのかという辺りのことを親御さんが把握できてい るようであれば、不用意な言葉を分かった上で、関わるようにします。

親御さんは、「どうして学校にいけないの?」「そんなことでどうするの?」などの言葉をかけがちです。子どもの先行きへの不安や心配から口にしてしまう言葉です。
しかし、誰よりも本人が一番その不安を感じているものです。
教師の前では無反応でも、本人が親から言われて怒る言葉を教師が使ったり、親御さんが、教師がいるのを幸いに、普段、我慢しているそれらの言葉をいうと、後になって本人の怒りが爆発し、保護者に怒りを向ける刺激になってしまうことがあります。

◆教師が本人にでできること

では、先生ができることがないのかと言えば、そうではありません。家庭訪問をした場合や、ときおり学校に来るような場合に、お子さんに関わることはできます。
上記のことに注意を払いながら、家庭訪問後や登校した際には、関わるようにします。
その後に家での暴言暴力がエスカレートしないかどうかを確認しながら、以下のことを意識して関わっていただければと思います。

このお子さんは、担任の先生も感じておられると思いますが、どちらかと言えばまじめで、優等生タイプのお子さんのようです。
お子さんがいだく怒りや悲しみや不安といった不快感を表現することや、自分の中にある衝動的な感情に突き動かされるようなことがあっても、それを抑える癖が付いてしまっていたのではないかと思います。

自己中心的な様子、怒りを爆発させることが、欠席が増えた後に、ご家庭で見られるようになったのであると想像しますが、いかがでしょうか。
もし、そうであれば、不快な感情を出さなかったことのバランスを取り戻すために、自己中心的な態度を示している場合もあります。このお子さんの場合は、いかがなのでしょう。

このお子さんに必要なことは、ギリギリまで不快感を我慢するのではなく、適宜、愚痴や不満を、信頼できる大人に言えるようになることですし、保護者から与えられた「よい子」の枠を逸脱したとしても、本人自身については、しっかりと受け止めてもらえる感覚を養うことが大事であるように思います。

その意味で、不快に感じる感情が、本人の表情や態度から見えるときには、「嫌そうだねー」「腹が立つのかなぁ」「浮かない顔しているなー」「なんだか心配なのかな?」など、不快感を言葉にします。

そして、怒りの感情が垣間見られたら、それを願いに置き換えて語るように促してください。
怒りの背景には願いがあります。それは、「誰に何をしてほしいのか」「誰に何をしてほしくないのか」という願いを言葉にするように手伝っていくのです。たとえば、その内容がが親や大人への恨みであったとしても、その内容が妥当かどうかを問題にするのではなく、本人のつらさや苦しさに焦点を当て、その気持ちを十分に聞きとり、本人の願いとして理解するようにします。

ここで示されている不快な「感情の言語化」は、このタイプのお子さんに限らず感情のコントロールの問題を抱える子どもへの基礎・基本となる関わりです。
これを繰り返すことなしに、感情のコントロールの問題が解決していくことはありません。
このお子さんは感情抑制的で我慢強いタイプでも、情緒不安定なタイプでも、自己中心的でわがままなタイプでも、基本となる関わりです。

自分の感情を表現することが苦手なお子さんは、自分の感情にすら気が付いていないことが多いものです。そのため、表情を捉まえて、その表情から感情を推察し、それを言葉にしていく。この関わりが、「感情を表現しても良い」ことを伝えます。

多くの場合、不快な感情を控えるようにという関わりを、大人側が強めてきた結果、怒りを上手に要求として伝えることができなくなっているのです。ですから、保護者の方が、それが必要だと思っても、これを実行に移すのは難しいものです。
その分、第三者である教師などの別の大人が、このような感情表現を手伝う関わりを行うことは多いに意味があります。

◆暴力は受け入れないようにする一方、言葉での訴えはしっかりと聞くようにします。

ただし、暴力は一切受け入れません。少々の暴言であれば、その訴えが示すことをしっかりと聞くようにしますが、気持ちを受け止めることと、暴力を許すことは違います。

身の危険を感じる場合では、その場を避け、けがなどが起きないように安全を確保することが必要な場合もあります。専門機関が関わっていれば、保護者にこのような示唆は与えていると思いますが、そのようなことがなされていない場合は、このような配慮が必要なことは、保護者にも伝えるようにしましょう。

なお、多くの場合、第三者のいる場で暴力は起きませんので、保護者の要請がある場合では、保護者と本人の話し合う場に同席をすることがあっても良いかも知れません。

2014年1月21日

クラスになじめず欠席がちな子ども

中学生の女子です。新しいクラスになじめず、欠席がちになりました。どのように関わるのがよいでしょうか

◆新しい環境になじめない欠席は珍しいものではありません。

不登校体験者2万6千人に及ぶ全国調査によれば、不登校のきっかけの第5位に、新しい環境になじめない場合が入ります。不登校の1割以上が、これをきっかけにしています。転居、転校、進級は、高いストレスイベントです。心理学では、これを「環境移行事態」と呼びます。

◆まずは先生との間で関係を築きましょう。

とくに、周りの刺激に敏感であることや、緊張しやすいお子さんの場合、環境の変化によるストレスを大きく感じることがあるようです。

まずは、担任の先生といい関係を築くようにします。学校環境に具体的な理由がある場合には、不登校の初期段階であれば、一緒に解決の方法を考え、問題を取り除くことが有効だからです。
「戸惑っていることはないか」「困っていることはないか」という声かけは、おとなしい、まじめなお子さんには、新学期、新学年には意識して多くかけるようにしましょう。転入生も同様です。

◆先生からの声かけが支えになります。

欠席した場合には、登校してきた際には、登校できたことを共に喜ぶとともに、不安や緊張の高さを配慮して、声かけ等を意識的に行うようにします。

そもそも、不安や緊張は、表情には表れません。それだけではなく、不安や緊張が行動面でも見えないこともあります。
一見元気そうに見えても、不安や緊張などを感じないようにすることで自分を守っていることもありますので、それを踏まえて対応します。

◆友人関係を軌道に乗せるところを手伝います。

友人関係などで不安を抱えているようであれば、担任がクラスメートを引き合わせるような役割を何気なく担うこともできます。たとえば、休み時間で一人でいるような子どもの場合は、ときに、そのお子さんと休み時間に一緒にそのお子さんの好む活動を楽しむことをしても良いでしょう。そのようにすると、周囲の子どもも、その子と先生との活動に興味を持って関わってくるようになります。その子と他の子どもの結びつきができた段階で、先生が去っていくようなことをします。

また、新学期には、学級開きなどを丁寧に行うことで、学級目標を全員の子どもの求めるものに定めることや、人間関係を構築するための学級活動の工夫も必要です。そのなかで社会性を育むソーシャル・スキル・トレーニングなどの心理教育や、校生的グループエンカウンターなどを始め、レクリエーションなどを工夫する中で、友人関係を軌道に乗せるお手伝いができるとよいかもしれません。

なぜなら、集団になじめない問題は、そのお子さんの課題ではありますが、その課題の解消を手伝えない学級全体の集団側がそのお子さんになじめない課題でもあるからなのです。

2014年1月19日 |

不登校の本人に会えないときに、教師の行えること

家庭訪問や電話で本人に連絡していますが、顔を出してもらえず、関われません。どのように関わればよいでしょうか。

◆無理に関わろうとせず、本人が安心していられる範囲でコミュニケーションをとるようにします。

家庭訪問や電話で会えないようであれば、手紙やFAXでも構いません。家庭訪問や電話以外の手段を用いて、先生が学校の雰囲気を伝える必要はあります。
FAXは保護者が目を通した方が良い学校の連絡の際に用いるのが良いと思います。メールは、本人が希望しない限りは使わない方がよく、教師側のアドレスは、学校のアカウントを用い、職場以外ではメールを見ることができないようにして、携帯メールを教師側が使わないようにします。携帯の紛失などで、子どもの個人情報が流出しないような配慮が求められるからです。

家庭訪問をした場合では、声をかけ、本人が出てこない場合に、置手紙を置いてくる方法が一番無難です。それは絵葉書や一言箋の方が良く、封書でない方が良いでしょう。保護者も目にすることができます。仮に、子どもがその場で破り捨てるような場合でも、この形ですと、瞬間に内容に目を通すことができます。

そこに書かれる内容は、本人が、登校できていなくても自分がクラスの一員であると感じられたり、先生が自分を支えようとしてくれていることを感じられるものになるように心がけます。
教師が子どもに連絡を取ることや、手紙などで働きかけることは、大きな文脈では、「学校で会いたい」との意味を持ちます。ですので、文面に登校を促す必要はありません。

不登校のお子さんへの手紙ではなく、「会えないのは寂しいけれども、元気であれば嬉しいです」というような、無条件に本人を気にかけていること、学級での様子、先生自身が最近考えていること、感じていることなどを、数行で記すようにします。そのためにも学校からの連絡物は、最低限、本人に届くようにします。

とくに、周りの刺激に敏感であることや、緊張しやすいお子さんの場合、環境の変化によるストレスを大きく感じることがあるようです。

まずは、担任の先生といい関係を築くようにします。学校環境に具体的な理由がある場合には、不登校の初期段階であれば、一緒に解決の方法を考え、問題を取り除くことが有効だからです。
「戸惑っていることはないか」「困っていることはないか」という声かけは、おとなしい、まじめなお子さんには、新学期、新学年には意識して多くかけるようにしましょう。転入生も同様です。

◆先生との間で安心して過ごせた体験を積みます。

本人とやりとりができるようになったら、本人の好きなこと、興味のあることを通してコミュニケーションをとります。
仮に会えなくても、手紙のやり取りや交換日記のような形に移行していくことで、関係を強めていった場合もあります。メールのやり取りを重ねることで、関係を強めていった場合もあります。

そもそも、不安や緊張は、表情には表れません。それだけではなく、不安や緊張が行動面でも見えないこともあります。
一見元気そうに見えても、不安や緊張などを感じないようにすることで自分を守っていることもありますので、それを踏まえて対応します。

会えるようになった段階では、本人の好きなゲームを一緒にすることや、近所を散歩する中で、ゆったりと会話を楽しむようにします。ここで大事なことは、本人が安心していられるような関係を先生との間で築いていくようにすることです。

何を感じているのかを表情から受け取りながら、緊張が見られる場合は「緊張しているかな?」「なんだか心配になっちゃうのかなー」、楽しそうな様子が見られたら、「楽しそうだねー。あなたが楽しいそうだと、先生も嬉しいな」というような言葉をときおり交えながら、一緒にいることを楽しめるようにします。
なお、この場合、家庭で留まる時間は長くても30分以内に留めます。長い時間過ごすことよりも、回数を重ねることの方が、関係を作っていくためには大事なことになります。

◆保護者との連携も大切です。

また、保護者とは連絡を密にとります。先生からの手紙に目を通しているかといった本人の様子を尋ねたり、「あなたの力になりたいと思っている」といった先生の気持ちを伝えてもらうなど、間接的な関わりを続けます。

保護者に「一緒に考えていきましょう」「お力になりたいと思っています」と伝え続けます。このことは、保護者を心理的に支えることになります。
保護者が不安に陥っていると、子どもも不安になってしまいます。そのことがますます子どもを不安にしていきます。
仮にお子さんにあえなくても、保護者を支えることが、本人を支えることにつながります。また、保護者が信頼できる教師だと思えれば、子どもも教師と出会う勇気を得やすくなります。

自分の感情を表現することが苦手なお子さんは、自分の感情にすら気が付いていないことが多いものです。そのため、表情を捉まえて、その表情から感情を推察し、それを言葉にしていく。この関わりが、「感情を表現しても良い」ことを伝えます。

2014年2月11日

欠席しがちな学業不適応から無気力になっている中学生

中学生です。定期的に欠席し図ふわふわります。学業不適応感を感じており、それによって無気力に陥っているように思います。どのように関わればよいでしょうか。

◆意欲を出させようとして激励することには効果がありません。

無気力な子どもに対して、頑張らせようと、一喝したり激励したりすることは効果がありません。
無気力の背景には、劣等感と憂鬱な気持ちがあります。これらは激励によって変えられませんし、それでうまくいかない場合には逆効果になります。意欲が出ないばかりか、激励に応えられない自分に気付くので、「自分はだめだ」との劣等感がより高まり、さらに無気力が高まるからなのです。

◆今できることに目を向け、やる気を引き出すようにします。

例えば、本人が今現在すでにできていることをさりげなくチェックし、それを指示として本人が気づかれていないように伝え、後でそれができていることを大いに評価し、褒めるという方法もあります。
たとえば、このようにします。「今、何時に寝ているの?・・・11時には布団に入る?・・・ふーん。いいね、それを続けてね・・・それでー」と会話の中で、気づかれないように指示を入れ込みます。次に会った時に、「昨日は何時に布団に入った?11時?そぉ、嬉しいなぁ。この前、それ続けるようにって言ったんだけど、それできているんだー、すごいねー」という具合です。

また、たとえ行動として表れていなくても、「気持ちの上でがんばっている」と、取り組む姿勢がわずかでも見えた時に、その後、それに取り組まなくても、その気持ちを認める関わりを根気強く行っていきます。
たとえば、「さっき、やってみようとして、鉛筆持って考えていたね。がんばろうと思っているんだよねー君は」と、気持ちが向いたことを評価するのです。

また、目標のステップを小刻みにし、1ステップごとに、できたことを振り返り、評価し、共に喜びます、そのことで、「できるようになったこと」に目を向けさせ、意欲を取り戻させ、その努力を継続していけるよう関わります。

◆学業不適応感は、自分が望む目標に達していないなどにより感じるものです

学業不適応感は、自分が望む目標に達していないなどにより感じるものです。成績の善し悪しに関わらず感じうるものです。傍の目では、できているのに、「自分はできない」と劣等感を強く抱いていることもあります。

ひきこもりの青年に関する調査によれば、学生時代に学業不適応を抱いていた者の割合は、一般の青年よりも、はるかに高いものでした。しかし、実際に彼らの学歴や学生時代の成績を調べると、大学卒業など、客観的な成績とは関係なく、学業がうまくいかなかったとの思いを強く抱いています。

このように、学業不適応感を抱いている場合ほど、「自分はダメだ」とか、「自分は役に立たない」などという気持ちを抱いているようなのです。このようなお子さんには、「あなたはあなたのままで良い」「あなたがいてくれると助かる」などと感じられる瞬間を数多く与えたいものです。

このようなお子さんに、学校のちょっとした用事をお願いし、先生が「ありがとう」と言える機会を増やすこと、「君はクラスの大事な一員だよ」「君がいてくれると助かる」といえるような機会を与えることが、支援の原則になると思います。

2014年1月20日

教師に向けての専門家コメントの例(1)ネグレクトが疑われる不登校傾向の小学4年生

小学4年生男子 不登校・ネグレクトの疑い

この一文は、不登校対策で専門家として、紙上コンサルテーションのコメントを教師向けたものです。
地域の不登校対策では、このようなコメントを最盛期には年に数百書いていました。

この事例は学校の支援として申し分のないものです。

*個人情報部分をそぎ落とし、一部、内容を改変しています。

★理解★

3年生時に60日の欠席、遅刻早退が35日で、今年度は40日、遅刻欠席が30日であったのですね。2学期以降欠席、遅刻早退が減少してきたようです。先生の関わりの成果が欠席の減少に反映されているように思われました。

欠席のきっかけは「病気・身体の不調」と「家庭環境の変化」にチェックがあります。
行動や様子では、「ストレスに逃避的である」「内向的である」「緊張しやすい」にチェックがあります。「虐待の疑いがある」にもチェックがあります。
生育歴には「2年生のころ両親離婚。親権は母親。母親が幼少時代ネグレクトを受けており、本人にも同様の虐待をしている可能性がある」とありますので、お子さんのお世話がなされていないということなのでしょうか。

学校では 「友人関係は比較的良好であるが、大勢で行動することは少ない。 休み時間は教室など校舎内で過ごすことが多い。 問題行動はほとんど見られないが、宿題などの提出物は滞ることが多い」 「未提出をごまかそうとすることもしばしばある。学用品の忘れも多い」 「教師が付き添っていると、黙々と課題に向き合うことはできる」とあります。
学力面は、「アンケート等では「体育」と記述しているが、特に好きという印象は受けない」 様子で、活動では「遠足や校外学習など、教室を離れて、クラス全体で活動するような取り組みには楽しそうに参加している」 のですね。
一方、「国語が苦手で、字を書くことを面倒くさがる。漢字の習得ができていない」 「全体を通して書く活動が苦手である。 教師に促されて初めて書く場面も多い」 とあります。

☆支援☆

学校内では、「生活指導全体会での共通理解」が図られており、また、校外連携として「校長、副校長、担任、特別支援教育コーディネーター、子ども家庭支援センター支援員、スクールカウンセラーでチームを作り、組織で対応」
「月に1回ケース会議を開き、今月の経過とそれを受けて今月の支援について話し合う」こともされており、チームを作り組織的な関わりが構成されていたのですね。

そして、担任は、「欠席のときはすぐに電話連絡し、必要に応じて家庭訪問する」 「宿題忘れは放課後に補講を行う」 「登校時にスムーズに学級活動ができるようにするため、毎日のノート、活動を書きとめた書類を作成し、家庭に届ける」 などの手厚い工夫をなさってきたことが伝わってきました。
加えて、担任以外の先生方も「校内で見かけたときは積極的に声をかけたり話し相手になったりする」「その中で本人の願いを担任とは違った立場から聞き取る」「委員会やクラブでも同様に対応する」 と、多くの先生が手を携えて、お子さんに関われらのですね。

先述のように、欠席日数が減り、登校が増えています。これまでの支援方法の賜物であったと思われます。
ご家庭で、どのようなことについて、お世話を受けていないのかまでは分かりかねますが、ネグレクトの体験のあるお子さんには、総じて、基本的に目をかけ、手をかける機会を多くし、「人と言うのは良いなぁ」という感覚をいかに育てるのかが大切な関わりになります。

ネグレクトは、「自分は愛される価値がない」「自分は大切ではない」との思いを抱きやすいものです。
また、両親の離婚は、どのような場合でも、重要な人から見捨てられる体験になりやすく、そのため、やはり、「愛される価値がない」とか「大切ではない」との思いを抱きやすく、加えて、「自分が悪い子」「自分はダメ」だから見捨てられたと思いやすいものです。

したがって、このお子さんに必要なものは、「自分は愛される価値がある」「自分は大切な人である」「自分は自分で良い」と思える体験であると思われます。

その意味を踏まえて、絶えず「あたたかい声かけ」をなさるようにしてきたのではないかと思います。
また、保護者がお子さんの面倒を見るような形で学習活動を支援なさっていたのでしょうし、登校に際して、「そのことを喜ぶ声かけを本人の負担にならない程度に行う」ことを心がけられていることにも表れているのではないかと感じました。素晴らしい関わりを展開されていると思います。

さて、「内向的」「緊張しやすい」ということは、強い不安や緊張、恐れを抱いていることが推察されますし、チェックはされてはいませんが、「自分の不快な感情を表現することが苦手」なのではないかと思います。
このお子さんが抱えている不安そうな表情(それは無表情ということなのですが)を見取って、「気になることがあるかな?」「心配なことは?」などの言葉かけが、必要なのでしょう。
また、その意味では、このお子さんには、安心していられる場が必要なのでしょう。安易に責められたり、叱責をされたりせず、仮に不十分でも、「それで良い」とする眼差しと言葉かけがほしいですね。

と申しますのも、お子さんの様子からの推察ですが、校内で大勢の仲間と共に規範に則った行動することができなかったとき(校外などでは、この規範が緩みます)や、自宅の事情で課題ができなかったときなどに、それを誰かから責められたり、笑われたりしたような体験が、不登校になる以前にあったかのではないでしょうか。
もともと、辛いことから逃れやすいお子さんであれば、不快に対する耐性は弱いでしょうから、仮に些細なことでも、その辛さを誰にも訴えることができず、ひどく辛い体験になってしまったかも知れません。

このお子さん自身、好きな教科に「体育」と記載しているようですね。これも想像ですが、元気に動ける「強い自分」になりたいと願っているようにも思われますが、いかがでしょうか。
たとえば、それは、別れた父親の「元気な子になれ」との願いを果たしたいかのようなこともあるのかも知れません。

あるいは、「体育が好き」な自分になりたいのも知れませんね。
ですので、運動好きの先生が、あたかも父親がわが子と運動を楽しむかのように、一緒に軽く身体を動かるような遊びをなさることも、お子さんにとっては必要なのかも知れません。
その中で、運動技術で伸びている点を見出し、評価し、その伸びを一緒に喜ぶような体験がほしいところです。
もちろん、それは、漢字学習のような不得手の克服でも必要な関わりですが、不得手な部分の改善のみならず、お子さんの好きな部分、得手な部分を見出し、「なりたい自分の願いに沿う形で、体育など、本人が学びたい領域で、力を付けられるようなご支援をお願いしたいと思います。

なお、親御さんも、お子さんへの接し方で困惑し、生活自体も大変な思いをなさっているのではないかと思います。ご自身がお世話を受けていないと、お世話の仕方そのものが分からないところもあるかも知れません。
親御さんのご苦労を労いつつ、親御さんの辛いところに寄り添いながら、どのような接し方が可能であるのかを一緒に頭を寄せて考えられる先生が、学校にいらっしゃることを願っております。

これまで述べてきましたように、これまでも十分に意を尽くした関わりをなさってきたと存じます。
今後も温かい支援をお続けいただけるように、よろしくお願い申し上げます。

2014年2月23日

教師向け専門家コメントの例(2):小学6年生女子(小中連携用)

小学6年生女子 不登校・感情のコントロールの問題

この一文は、小中連携支援シートシステムで、不登校対策で専門家として、紙上コンサルテーションのコメントを教師向けたものです。
小学校の先生は6年の3学期の支援に生かすように、中学では1年生当初の関わりに生かすように記載しています。
小中連携支援システムでは、小学校の間に年間15日以上の欠席の履歴のあった児童が対象になっています。

*個人情報部分をそぎ落とし、一部、内容を改変しています。

☆理解☆

1年生で20日、2年生50日、3年生20日、4年生40日、5年生20日、6年生3日(遅刻・早退4日)欠席したお子さんですね。
「友だちとの関係」が欠席の原因であったとのことですね。 登校については、お子さんも家族の方ともに、「積極的でも消極的でもない」状況のようで、先生としてもご心配されていることかと思います。

このお子さんは、先生からご覧になって、「自己中心的である」「ストレスに逃避的である」と見受けられ、「孤立感がある」とお感じになっていらっしゃるのですね。

「感情の起伏が激しい」「怒りをうまく抑えられない」「興奮しやすい」、「キレやすい」にチェックがあり、一旦怒ってしまうとその怒りをうまく収められないなど、感情の起伏が激しいところがあるようですね。

☆支援☆

◆日常的な教育的関わりについて◆

6年生の担任の先生は、遅刻や欠席をした際には、必ず連絡をとり、手紙を届けさせたりするなど心配りをされていたのですね。担任の先生のご努力で、「いつも自分のことを気にかけてくれている」という思いを本人は感じていたと思います。
登校して、学校で過ごしている時には、「折りにふれ、本人の長所を学級のみんなの前で誉め、クラスの中での居場所作りや存在感を本人や周囲の友だちに感じさせるようにする」などの、きめ細かい指導も本当に素晴らしいと思いました。
やらなくてはいけないとわかってはいても、このような場に応じた必要な声かけは、継続的にできることではありません。

自分の存在感を示しやすい日直や司会の仕事では、本人の声の大きさを考慮し、その役を与えることで本人も自己有用感を持つことにつながったことでしょうね。何より会がスムーズに進むことは、周囲の友だちからの評価にもつながる取組だと感じました。
体育、家庭といった好きな教科の学習の際には、本人のやる気をさらに促し、反対に苦手にしている算数では、本人に適切な課題を提示したりするなど、できる喜びを伝えるようにされてきたのだと理解しました。先生のさまざまなご配慮に頭の下がる思いです。

そのようなご努力の成果として、6年生の欠席日数がぐっと低下してきています。
このような関わりが、このお子さんに必要なことであると、この面からも理解することができます。

しかし、このようにきめ細やかな配慮をしてもなお、「思うようにいかないと周囲と協調して取り組むことができなくなってしまう」「個性的な友だちと衝突する」様子が見られるのですね。
このような事情がありますので、今後とも継続した配慮が必要なお子さんであると思われます。

先生が心配されている「自分から話しかけられない」といったコミュニケーションの課題については、クラスメートと一緒に仕事ができるような環境を整え、一つの目標を他の子と一緒に解決する体験を数多く味合わせることを試みることもひとつの方法のように思います。
本人が好きと感じている、ピアノを交えた合奏や、動物の世話、パソコンでの作業で取組みであればやりやすいかもしれません。もちろん、クラスメートの側に、誘い掛け、仲間に引き込む力を向上させる手立ても多く設けたいように思います。
孤立は、個と集団の関係の問題ですので、個々人を受け入れていく度量のあるお子さんたちの集団を作り上げることは、学校の先生ならではの先生冥利に尽きる関わりなのではないかと思います。

◆感情のコントロールの問題について◆

次に、「怒りを収められない」「興奮しやすい」といった感情のコントロールについてです。
このお子さんの場合、「友だちとの関係」の問題が欠席と関連があったようですが、友だち関係の問題での傷つきや、ご両親の離婚の体験などでの傷つきがあり、それらの体験による傷つきのために、怒りをうまく扱うことができないという今の様子と関連があるように思えます。

これらのことと、欠席日数の増減との関連は明確ではないようですが、傷つきを受けたときに、それを我慢していた場合ほど、後になって、このような問題として現れてくることはあよくあります。

怒りを収められないとはいっても、永遠に怒り続けている人はいないかと思います。必ず不快感から回復する瞬間があります。その瞬間、つまり怒りなど不快な感情から回復した瞬間、気持ちを立て直した瞬間を意識化させ、その心地よさを味わわせることが大切です。

具体的には、「怒りがなくなってきたね」「よかったね」「落ち着いた気持ちは、いいものだね」と、不快感が消えたことの心地よさを強調する言葉がけが大切です。
また、自分自身が感じている不快感を適切に表現できるように、気持ちを振りかえるようなことをされるときには、「嫌だったんだ」「腹が立ったんだよね」「くやしかったんだ」「悲しかったんだ」と不快な感情を言葉で表現できるように、表情を捉えて、その表情が示す感情を丁寧に言葉にしていくこと、そのうえで、「●●してほしかったんだ」「●●してほしくなかったんだ」など、その背後にある相手や状況に対する本人の願いを的確な言葉で表現することをお手伝いください。

その上で、「その願いを相手により分かるように、どう伝えれば良いだろうか?」と、怒りではない方法で、自分の要求を伝えていく方法を一緒に考えていただければと思います。
先生が気にされている「孤立感」も友だちと上手に付き合えないところから感じているのかもしれません。

◆両親の離婚について◆

さて、先生が非常に心配されているご両親の離婚についてです。通常ですと、ご両親が離婚のような課題 を抱えると、そこに至るまで数年要します。その間、お子さんはさまざまな形で辛い思いを抱くことが少なくありません。
御両親がどれほど円満に別れるにしても、子どもにとっては、自分の父親と母親は一生変わるものではありません。

自分が至らないので両親が別れてしまった、見捨てられてしまったとの感覚は、どうしても残ります。
「わたしは大切でない」「私が悪い」「わたしがダメだ」などと、自分について考えてしまう場合もよくあります。このお子さんに必要なことは、「あなたは大切」「あなたはあなたでよい」と感じられるようなかかわりであると思います。

幸い、お父様がお子さんに目を向けておられるとのことですね。学校と家庭で、「あなたは大事」と思えるような体験が味わえるように、同じ姿勢で関わることでさらに気持ちが落ち着くように思われます。

小学校低学年から中学年にかけて欠席が非常に多かったことも、先生が心配されているように一因としてあるかもしれません。 中学進学にあたっては、不登校傾向があったこと、両親の離婚等、小学校でのお子さんの状況とその対応をしっかりと伝えていただければと願っております。

幾分、肥満傾向であるとのことから、養護の先生も関わりがあったかと思います。担任間だけでなく、養護教諭間での情報共有もよりよい関わりにつながっていくかと思います。
現在は教育相談センター等の教育相談機関につながってはいないとのことです。中学校入学後にご心配なことが見られたときには、折りを見て、スクールカウンセラーにつなぐことも視野に入れておくとよいと思います。

大変とは思いますが、今後とも継続したあたたかい支援をお願いいたします。

2014年2月24日

教師向け専門家コメントの例(3):不登校の中学1年女子

中学1年女子 不登校・DVのある家庭

この一文は、不登校対策で専門家として、紙上コンサルテーションのコメントを教師向けたものです。
地域の不登校対策では、このようなコメントを最盛期には年に数百書いていました。

*個人情報部分をそぎ落とし、一部、内容を改変しています。

★理解★

昨年度に約70日の欠席、遅刻早退が35日、別室登校(相談室登校)が10日で、今年度は約100日、遅刻欠席が50日、別室登校が50日であったのですね。
不登校のきっかけとしては、「病気・身体の不調(頭痛)」「家族環境の変化」とあります。学習への意欲は、「どちらとも言えない」であり、行動や様子では、「自己中心性がある」「ストレスに逃避的である」「幼稚さがある」「過度の依存や甘えがある」「周りに刺激に敏感である」「集団での遊びを好まない」「感情の起伏が激しい」「乱暴な言動がある」「人の気持ちを理解することが苦手」にチェックがあります。

学校生活では、「学校行事の代表や縦割り班の班長などの責任のある仕事を積極的に引き受け、てきぱきと行動している」「周囲の子の気持ちを考えず、きつい発言(命令口調)や自分勝手な発言をしてしまい口論になることがある」「読書を好み、中休みは一人で教室にいたがる」とあります。
とはいえ、「仲の良い友達は少ないがいる」とのことで、孤立をしているわけではないのですね。

学力面では、「理解が早く、どの教科でも意欲的に発表し成績がよい」「発言も的確。欠席していても、少し聞いただけで、内容を理解できる」「読書が大好きで常に読書しているため、国語の読み取りなど他の児童が気づかない深い読みができる」とあります。
好きな教科は「国語」で、苦手な教科が「体育」なのですね。また、学校行事などでは、「代表として活躍することが多い」とのことです。
また、「深夜にインターネットのチャットで友達とよく会話」をしていることや、「読書が大好きで、本を読んでいる」ことが多いのですね。小柄でやせすぎの傾向。いつも顔が青白い。視力が悪い。

生育歴では、小さいころからDVを見てきたようですが、本人が語るところでは「父が大好きだった」のですね。母親が父親のDVから逃れて5年の後半に転入してきたとのことです。
問題の経過としては、「6年の5月から、平均的に週に1度登校しぶり。母が送ってきて遅刻したり欠席したりが断続的に続いた」とあります。
「この頃、兄(当時中三)が不登校。二学期の9月末、父親のところに行きたいと本人が駄々をこねる頃から欠席日数が増え始め」たのですね。「三学期の前半、元気に登校していたが、3月登校しぶりが再発、週2~3日欠席が増え中学1年に進級する」という流れだったのですね。

☆支援☆

「今までに行った工夫や配慮・支援」として、「母のメンタルケアが必要なため、相談員と共に母の話に耳を傾けた」「責任のある役割を与え、登校を促した。(学校行事や班長など)」など、お母様への支援や、学級経営の中でお子さんの活躍の場を与えながら、責任のある行動を取るように促されること、そして、登校に関しては、「1人では登校できないことが多いため行けるときは迎えに行った」「休んだ時には、手紙を届けに行き、直接会って様子を聞いた」など、積極的にお子さんに関わるなどの手立てをなさってこられたのですね。
先生の熱意が伝わってまいりました。

「今後の工夫や配慮・支援方針」としては、「校内の教育相談室に登校できる日が増えてくるに従って、教室に足が向かなくなってきたため、担任や友人から、給食や授業で教室に来るよう声かけを増やす」「相談員やSC、養護教諭との連携を強化し、組織で協力して支援していく」「母の心理状態の影響を受けやすいため、母の様子を把握する」「担任が行けないときは、できる限り迎えに行ってもらう」「さらに教室に行くよう促してもらう。(相談員)」というような関わりを考えていらっしゃるのですね。
いずれも大事にしたい関わりであると思いました。

さて、このお子さんの場合、ご両親が分かれて生活するようになったこと、また、母親にとっては、恐怖の対象である父親であっても、それ以上に別々に生活をすることで感じている満たされなさの方が辛いものであることが伝わってまいりました。
どのようなDVがあったのかは分かりませんが、恐い思いもしたのでしょう。
しかし、それは、一方では、父親を怒らせてしまう母親への頼れなさのようなものも感じていたかのようにも思われます。
「父親の元に行きたい」「父親が大好きだった」などのことは、この満たされなさを必死に伝える姿であったかのように思われました。
通常の離婚以上に、このお子さんの場合は、「母親に父親を見捨てることを強要された」感じがあるのでしょうし、それゆえに、父親への恋慕も募っていくことになったのでしょう。

母親のメンタル面の不安定さは、DVの結果であったかも知れませんが、逆に母親の不安定さを抱えることができない父親が「言うことをきかせよう」と思ってDVがエスカレートしていってしまったようなことも、その経過の中で生じていたと考えられることもあるかと思います。
そのような振る舞いや姿勢が、このお子さんがリーダーとなりたがることや、友人への厳しい口調などのような形で取りこまれてしまっているようにも思われました。

ですので、このお子さんに強く言ってきかせることは、避けた方が良く、人を納得させるのには、まずは、相手にOKを出していくことの大切さを、実感を持って味わってもらえることが重要になるように思えました。
「あなたはあなたでいて良い」との実感を得させるように、そのように思える体験を数多く与えることが、このお子さんには重要なことであると思われました。

たとえば、「甘えや依存が強い」ことが、どのような点を指すのかは分かりかねますが、そのようなお子さんに必要なのは、枠をしっかりと設けた上で、「あなただけの時間」というようなものを作り、本人が好む活動を一緒に行うことが重要な関わりであるように思います。
幸い、別室登校で他に関わるSCや支援員の方がいらっしゃるようですので、本人が好んで読む本について、ゆったりとその内容を対話することや、文章を書くことにも抵抗感がないようでしたら、本の話題について交換日記をなさるなど、彼女の持つ豊かな世界を共有できる大人が近くにいて、お子さんと関わることが大事であるように思いました。

また、このお子さんにとって、同級生の友だちは、自分が抱えてきた辛さ苦しさとは無縁の世界にいるように思えているのかも知れませんね。
頭の上では十分大人でありながら、情緒的には満たされないものを深く抱えていて、そのことを誰にも告げることができないままずっと過ごしてきているのではないでしょうか。
それゆえに、仲間の至らないところを見出すと、自分を抑えることができずに、他罰的になっていってしまうのでしょうね。

友だちは自分のことは、本当には分かってくれはしない・・と思っているように思われます。ですので、安心して教室にいることができていないようなのですが、恐らくは、そのことへの自覚も十分にできてはいないようにも思われます。

ですので、別室にいるこのお子さんを教室に誘うときや、押し出す前に、最初の段階では、教室への入室を第一と考えず、短い時間で十分ですので、先生の側が意識してお子さんと別室で顔を合わせるようになさり、温かい声をかけ続けることが第一に求められることであるように思います。
幼いわが子に会った時に、にっこりとほほ笑むように、「あなたの顔見ると嬉しくなっちゃうな」「ほっとするわ」などの言葉をお願いします。

そして、そのときの表情を捕まえ、「今日は良い顔しているね」「なんだか気分がすぐれないかな?」「心配なことがあるかなー?」「心配なことがあったら、言ってちょうだいね」など、お子さんの感情を言葉で表現なさることを繰り返していただければと思います。

自分ひとりで、頑張って、頑張って生きようとしているお子さんのようですので、「あなたが頑張っているのを知っているよ」という言葉も、このお子さんから張りつめているようなものを感じた時には、かけてみたい言葉のように思われました。

このお子さんの課題は、思春期が進むにつれて、より顕著なものになっていく恐れもあります。その意味では、今、できるだけ「子ども扱い」されること、「子どもとして大切にされること」が必要であるかと思います。

それだけに手間暇かかる関わりになるかと思いますが、上記のことを担任の先生が繰り返していただければ、無理に誘わなくても、学級には自力で参加してくるようになるお子さんであるように思われました。

大変なことをお願いして恐縮ですが、これからも丁寧なご支援をよろしくお願い申し上げます。

2014年2月25日

 

 

教師に向けての専門家コメントの例(1)ネグレクトが疑われる不登校傾向の小学4年生

中学1年女子 不登校・自己中心的

この一文は、不登校対策で専門家として、紙上コンサルテーションのコメントを教師向けたものです。
地域の不登校対策では、このようなコメントを最盛期には年に数百書いていました。

*個人情報部分をそぎ落とし、一部、内容を改変しています。

シートからは、先生の記載が不足し、回答を書きにくいこともあります。そのような場合の回答です。

☆理解☆

昨年度の欠席については、記載がありませんが、今年度は、2学期の途中で45日欠席(1学期18日、2学期27日)、8日の遅刻・早退の見られたお子さんですね。
欠席が見られた理由やきっかけとして、学業上の不振、友人との関係の問題にチェックがあります。「学習への現在の意欲」についてはチェックがありません。

本人の行動や様子では、「自己中心性がある」「ストレスに逃避的である」「幼稚さがある」「過度の依存や甘えがある」にチェックがあります。
「人の気持ちを理解するのが苦手」にチェックがありますが、発達障害関連の項目にチェックがありません。

ですので、アスペルガー様の他者の気持ちの理解のできなさではないと理解しましたが、それでよろしいでしょうか?

学校生活での様子としては、「登校したときは、クラスメイトと談笑したりと普通に過ごすことができる」のですね。好きな科目は「保健体育」で、苦手な教科は、「数学」「英語」なのですね。学校で好きな活動には、記載がありません。
学校での苦手な活動には「特になし」とあります。興味を持っていることは、「動物が好き」とあります。

担任の先生は、「欠席が続いた時は、家庭訪問を行うなどコンタクトを取っていた。母親とは連携を取りながら、話しながら対応していた」とあります。
また 今後の工夫や配慮・支援として、「今まで面倒を見ていた子が、疲れてしまい距離を置くようになってきた。しかし、クラスメイトの中では話をしたり、一緒に活動する生徒はいる。今後本人がこの現状をどうとらえるか、自分でも変わらないといけないと少し考え方を変えるきっかけになってくれればと思う」とあります。

☆支援☆

欠席が継続した場合に、先生は家庭訪問を行うなどで、お子さんの様子を確かめに行かれているのですね。
学業面では、英語と数学とのことですが、英語は中学1年の早い段階で、躓いてしまったのかも知れません。

おそらく、お急ぎになって、本シートを作成されたのではないかと思います。
担任の先生以外の先生方も、このお子さんに関わりをなさってきたであろうと存じますが、記載がされていませんでした。

小学校では、なかなか情報共有が難しいのですが、中学では、学年で話し合われ、学年団での関わりと共有なさってきたのではないかと思います。

本シートの担任以外の記入欄は、そのような情報をまとめるために作成しておりますので、次回、このシートをご利用いただくときには、シートそのものを仕上げることが、学校内での情報の共有と共通理解のための道具として、ご活用いただけるのではないかと思います。
あわせて、本シートのコメントも複数の関係する先生方でお読みいただけることを願っております。

と、申しますのも、これまでの数百例を超える先生方へのコンサルテーションの成果として、お子さんに身近に関わることができる教職員が多ければ多いほど、そして、その教職員がチームで支援するようになっていることが、その後の不登校の改善に効果的であることが、明らかになっております。

担任の先生だけでなく、養護の先生や専科の先生のように、関わりの深い先生方などの、数多くの先生が関わっていられるのではないかと思います。

とくにこのお子さんの場合、「自己中心性がある」「ストレスに逃避的である」「幼稚さがある」「過度の依存や甘えがある」にチェックがあります。

これらは、端的に言えば、我慢する力、頑張る力が十分に育っていないということがあるのでしょうか。

我慢の力は、遠い目標に対して、したいことをあえて行わないことに関連します。我慢の力は、我慢した甲斐があったと、どれだけ認められ、褒められた体験があったかに左右されます。

また、この力は、遠い目標に対して、したくないことをあえて行う頑張ることも関連します。
この力は、どれだけうまくいった体験を持ったのか、とくに、過去の自分に比べて、伸びたところを認められ、共に喜んでもらえた体験をどれだけ多く味わったのかによって、この面の育ちが違ってまいります。

残念ながら、このお子さんの場合、これらの体験が少なかったのではないでしょうか?

これは自信のなさに強く関連しますし、さまざまな場面での不安の強さとも関連しているのだと思います。
ですので、このお子さんにとっては、まずは、多くの先生から我慢を認められる言葉、励ます言葉、努力、頑張りを評価する言葉がどれだけ多くかけられるのかが、問題の改善には一番重要なことになると思われます。

それだけに、学年全体で、さまざまな温かい言葉がお子さんに、今以上にかけられることが、今後を大きく分けることになるのではないかと思われるのです。

具体的に言えば、中学生の標準から見れば、ずっと水準が低いことであっても、お子さんの改善に繋がるところは、認め、褒めるように繰り返すことがとくに必要なお子さんなのでしょう。
極端に言えば、このお子さんと学校で顔を合わせた時に、「会えて嬉しいな」「顔を見てほっとしたよ」などの肯定的な声掛けを学年の先生が意識して一言余分に行うだけでも、お子さん自身の登校を変化させることに繋がるでしょう。
また、授業に出たときに、このお子さん自身がどこかで伸びたところを見出して、その伸びを喜ぶことなども意味ある関わりではないかと思います。

さらに、つらい状況から逃れることしかできないような場合には、まずは、その不安や怖さ、できないという思いからくる辛さなどを、まずは、言葉にして代弁されることも、重要なことであるように思います。
これは、不快な感情を言葉で表現するということですが、「嫌だって感じてるんだ」「心配なんだね」「困ったんだ」などと、お子さんの気持ちを代弁されるようにしてください。「したいけど、できないって感じかな?」「やる気がしないのかな?」などと、お子さんの気持ちを語るのも良いと思います。

このとき、実際に行動を許容する必要はありません。感情面を受けながらも、行動面では、「さて、どうすればよいのかな?」「どうしたいのかな?」と本人に尋ねながら、「それでも、少しやってみようか」「それはしないでおこうね」などと、説得するのは構いません。

しかしながら、その前に、その気持ちをしっかりと言葉で表現できるようにお手伝いいただければと思います。
この表現が適切にできないので、わがままに見える行動を実力行使してしまう場合がありますし、他者の気持ちを分かるためには、自身の気持ちを的確に語れるようになることが第一歩であるはずです。
このことなしに、「自身を振り返らせる」ことは難しいのではないかと思います。
このようなことは、他の生徒さんにお願いできるようなものではありませんし、お願いをしてはいけないことではないかと思います。
また、他のお子さんが「面倒を見る」との記載がありましたが、この意味が具体的にはどのようなことを指すのかは分かりかねますが、能力的に面倒を見る必要があるようなお子さんであるとの意味でないのだとすれば、片方が片方の面倒を見る形は、このお子さんにとっても、いつまでも「弱くてできないあなた」とのメッセージを与えることになります。

その意味では、生徒さん同士の立場は対等になるようにしていただく方がよろしいように思いました。
もちろん、心の支えになりたいとの申し出が他の生徒さんからあった場合には、どのように支えることが、このお子さんに望ましいことであるのかという点について丁寧に話し合いを持たれて、その申し出や温かい気持ちを生かしていただくことは、大切にしたいことでもあります。

また、先生方が、このお子さん自身が興味のあるところで、話題が共有できるようでしたら、休み時間などに、たとえば動物のことなどについて、お話をすることや、保健体育では、係などをお願いすることや、ちょっとした作業を依頼して、「ありがとう」「君がいて助かるよ」などと教師から言ってもらえることなど、自己有用感(自分が役に立っている)を育てる必要のあるお子さんではないかと思いますし、それを教師が主導で行うことは大事にしたい関わりであると思います。

また、すでになさっているのはないかと思いますが、欠席に関しては、必ず、その日のうちに、お子さんと連絡を取り、お子さんの声を聴くようにされていると思います。
月に3日の欠席があれば、それが連続3日でなくても、家庭訪問をして、お子さんと会い、学校での楽しい話題を話すこと、「顔を見ないと寂しいよ」と伝えるなど、わがクラスの大事な生徒さんのお一人として、「あなたは大事」「あなたは大切」という感覚が伝わるように温かく関わっていただければと願っています。

そして、このお子さんの場合には、学校に来ている日の方が多いわけですので、学校でいかに居心地の良い時間を過ごせるのかが大事なことのように思われます。
学校内での人間関係では、仲間をお子さんが避けているようなことはないようですが、担任の先生が記載されているところでは、周囲の友人が「疲れてしまう」ようなことがあるのでしょうか。
「人の気持ちを理解するのが苦手」ということと関連するのかも知れません。

少なくとも、チェック項目を見る限り、感情のコントロール面での不調はありませんので、友人を泣いたり、怒ったりして振り回すようでもないようですね。
能力的な問題で場面の推測が悪いようなことがあるのかも知れませんが、シートからは、欠席のきっかけに「学業面の問題」にチェックがあるものの、全体として学業不適応などの記載がなく、判然といたしません。

ただ、能力的な問題が仮にあったとしても、仲間が負担に感じるような関わりを求めるのは、それまでの生育歴の中で、「あなたは大事」「あなたは大切」「あなたはあなたで良い」と言われた体験、存在そのものを大切にされた体験が少なかったのではないかと思います。

その意味で、繰り返しになりますが、欠席や学業面での支援の中で、教師の側がどれだけ、このお子さんに寄り添うのかが、このお子さんの今後の適応を左右する重要な関わりであると思います。

お忙しいところ恐縮ですが、このお子さんを支えるためにさまざまなご支援を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

2014年3月2日

不登校・長期欠席の推移:長期欠席・不登校の出現率は深刻なまま横バイ

 

図は、平成3年度間(1991年度間)データから最新の平成24年度間(2012年度間)データまでの過去21年間にわたる小学生の全児童数に占める長期欠席と不登校の比率(以下,それぞれ「長期欠席出現率」「不登校出現率」と呼ぶ)の推移を示しています。
ここで分かるように,「長期欠席」「不登校」の児童生徒の出現率の推移パターンは類似しています。これは、長期欠席の中の不登校の占める割合が多いためです。

大局的に言えば、20年間にわたって上昇し続けた「長期欠席」「不登校」の出現率の上昇は止まったものの、大局的には10年間にわたり横バイで、この問題が依然として深刻であることが分かります。

これ以前のデータについては、小林(1994)が,「学校ぎらい」の出現率を根拠に,中学生で1980年度から,小学生で1985年度から上昇を開始したことを示し,その後上昇の一途を辿ったことを明らかにしました。
途中で,長期欠席の年間欠席日数の基準が30日以上に変動したものの,この傾向は,小学生で平成10年度(1998年度),中学生で平成14年度(2002年度)まで上昇し続けたと推測できます。
すなわち,小学生で13年間,中学生で21年間に及ぶ長期の右肩上がりの上昇が継続しました。
とくに,中学生で,平成3年度からの10年間の上昇は急激で,「不登校出現率」は3倍近く,「長期欠席出現率」でも2倍の上昇を示したのです。

この曲線が下降に転じたのが,小・中学生では,共に2003年度間データです。
この年度の「長期欠席出現率」「不登校出現率」の低下を考える上で,学校の完全週5日制の実施,と時期が合致していることは見逃せません。
完全週5日制は,授業日数を年間20日ほど減少させます。年間30日の欠席日数を基準とする長期欠席では,その出現率を下げるように作用するのは当然の話で、この年度の減少現象はこれによるものなのです。

その後、2003年度以降,横バイになるかのように見えますが,2006年度から再び微増の傾向が見られ,とくに、中学生の「長期欠席出現率」および「不登校出現率」は,2008年度には,それぞれ3.76%,2.86%となり共に過去最高値を示しました。
その後、若干減少してきているものの、最新の2012年度データによれば、中学生の「長期欠席出現率」は3.41%であり,「不登校出現率」は2.56%と依然として高い水準にあるのです。

これまで述べてきたように、20年間にわたって上昇し続けた「長期欠席」「不登校」の出現率の上昇は止まったものの、大局的には10年間にわたり横バイであり、この問題が依然として深刻であることは間違いがないと言えるでしょう。

2014年1月4日

被災地での長期欠席の増加について

福島、宮城、岩手の2009年度から2012年度までの年間30日以上の欠席を示した児童生徒の出現率の推移を一度に示します。

阪神淡路大震災後、兵庫県の不登校、長期欠席の出現率は激増しました。それと同じ現象が宮城県で見受けられます。

宮城県では、2012年度の中学生の不登校出現率が3.1%と なり、全国で一番高くなり、新聞でも取り上げられました。
長期欠席率を見ると、中学生の長期欠席率は、2011年度は下降し、2012年度に急上昇が見られます。これに対して、小学生は、11年度、12年度と微増を続ける形の増加 になっています。

宮城県長期欠席推移宮城県は、もともと小中ギャップが大きい県です。その中で、小学生の上昇が2011年度から見られることが気になります。それゆえ、彼らの中学進学に伴って、今後、中学での不登校の上昇には歯止めがかかりにくいことが心配です。

福島県長期欠席推移

福島県の場合、震災の起きた2011年度から長期欠席率は上昇を開始しました。福島の教育委員会関係者からは、2013年度は、それを上回る勢いで上昇中であると聞いています。

福島県企画調整部統計課(2013)によれば、小中学生の不登校出現率が全国平均よりも低いものの、0.97%(全国平均1.09%)で、不登校も過去5年間で最も高い出現率になっています。
中でも、中学生の上昇が著しく、長期欠席出現率は3.19%(不登校;2.34%)であり、震災前年の2010年度の2.76%(不登校;2.17%)から見れば、0.43%(不登校;0.17%)分上昇したことになります。
ちなみに、福島県で一番上昇しているのは中学生の「病気による欠席」であり、0.68%で、2010年度の0.47%よりも0.21%も上昇し、全国平均の0.52%を上回っています。
これまで述べてきたように、20年間にわたって上昇し続けた「長期欠席」「不登校」の出現率の上昇は止まったものの、大局的には10年間にわたり横バイであり、この問題が依然として深刻であることは間違いがないと言えるでしょう。

この「病気による欠席」が増えていることが、福島県では気にかかります。ご存知の方は少ないですが、全国の長期欠席の出現率のトップは大阪府で、他に比べてずっと高いまま推移しています。
そして、その大阪は「病気による欠席」が全国の断然トップです。大阪の中学生は、データ上、全国平均の2倍近く欠席をしています。教員が欠席の理由を「不登校」ではなく、「病気による欠席」と理解している場合ほど、その後、長期欠席が多くなる傾向があるのです。

ですから、「病気による欠席」が増加中の福島県も気になります。以前から福島県は「病欠」を多くカウントする傾向が強かったのですが、その傾向が減少して、順調に長期欠席の出現率を低下させてきました。ところが、災害以降、「病欠」に多く分類する傾向が復活しました。

このように、宮城県も福島県も今後、注意をしていかなければなりません。

岩手県長期欠席推移ところが、岩手県は、もともと長期欠席が少ない県です。そして、震災以降もさらに長期欠席が下降し、小中学校は共に全国でも最低の出現率になっています。

これは中越地震後の山腰、長岡地区にも見られた現象です。災害があったからといって、必ずしも、子どもの欠席がその後、増加するわけではありません。長岡市の不登校も災害後にむしろ減少し、今でも、新潟県の中でも少ない出現率のまま推移しています。

岩手と宮城は被災状況が似ています。けれども、両者の一体何が違っているのかについて、今後精査していく必要があると考えています。

2014年1月8日

2013年度に全国の長期欠席、不登校は増加に転じました。


10月17日朝のNHKニュース「おはよう日本」では、不登校の増加について報じられました。当NPO法人理事長小林正幸東京学芸大学教授が、この件についてインタビューを受け、コメントをいたしました。

この増加について、出現率で正確にデータで示します。
出現率では長期欠席が全国の小学校で0.03%、中学校で0.13%の増加です。
長期欠席者数は年間30日以上欠席をした小中学生です。
でも、子ども人口は変動します。増減は全体の児童生徒数を勘案しなければいけません。それを勘案したのが出現率です。全体の児童生徒数から、長期欠席者や不登校の生徒を除した数が出現率ということになります。

不登校は、長期欠席の中から「病気による欠席」「経済的な理由」「その他」を除いたものです。
この場合の「その他」は、子どもが欠席せざるをえないやむを得ない事情を抱えている場合であると考えるべきものです。というのも、本来、不登校の定義は、客観的に登校できない理由がないにも関わらず、登校しない、もしくは登校できない場合を捉えるための分類であるからです。
不登校の増加では、出現率も小学校で0.05%、中学校で0.13%の上昇です。
ですので、不登校は今年上昇に転じたと言えると思います。

過去20年の流れを見返すと、1992年から2002年までの10年間に、長期欠席も不登校が右肩上がり上昇していることが分かります。小学校も中学校もこの時期は急増していました。上昇が止まったのは、2003年度です。この年の減少は、週休完全2日制が開始されたからです。年間の授業日数が20日ほど減りました。そのために30日以上欠席を示す長期欠席の子どもが減るのは道理です。
その後、小学校は横バイになりましたが、中学校は増減を繰り返します。最高の数値を示したのは2009年でした。その後減少していきましたが、今年再上昇しています。

2014年10月24日

2013年度の都道府県別長期欠席児童・生徒の出現率

2014年度に公表された学校基本調査を元に、長期欠席の出現率を都道府県別に分析しました。その結果です。図では、赤がとくに多く、黄色は全国平均よりも多い地域です。緑、青は平均を下回る地域で、その順に長期欠席の出現率は下がります。ワースト7、ベスト7は以下の通りです。

【長期欠席が多い府県】ワースト7

小学校:ワースト順 1.沖縄(1.40%)、2.岡山(1.28%)、3.大阪(1.21%)、4.滋賀(1.09%)、5.高知・奈良(1.06%)、7.千葉(0.99%)

中学校:ワースト順 1.大阪(4.94%)、2.高知(4.56%)、3.岡山(4.21%)、4.兵庫(4.13%)、5.奈良(4.07%)、6.長野(4.05%)、7.山梨(3.98%)

【長期欠席が少ない県】ベスト7

小学校:ベスト順 1.熊本(0.39%)、2.岩手(0.40%)、3.青森(0.41%)、4.山形(0.42%)、5.秋田(0.46%)、6.新潟(0.48%)、7.長崎(0.51%)

中学校:ベスト順 1.岩手(2.33%)、2.山形(2.49%)、3.富山(2.74%)、4.青森(2.75%)、5.新潟(2.77%)、6.群馬(2.81%)、7.熊本(2.82%)

ここで気になるのは、ワースト1位とベスト1位の差異です。長期欠席の出現率は、小学校で沖縄は熊本の約3.6倍もあります。中学校の長期欠席の出現率は、大阪は岩手の2.1倍もあります。年間30日以上欠席をする児童生徒は、地域により小学校で3.6倍、中学校で2.1倍も出現に差異があるのです。

この差異はそのまま不登校の地域差を表すと考えてよいと思われます。長期欠席は、不登校の割合が、中学の場合で、約4分の3を占めます。長期欠席の不登校以外のカテゴリーでは、「病気」の割合がこれに継ぎます。「その他」と「経済的な理由」がそれに続きますが、「経済的理由」にチェックされることはほとんどありません。ところが、不登校以外の割合にも、地域差がここにも色濃く見られます。そのデータを見ると、大阪の中学生は全国の小学生の4倍、全国の中学生の平均の2倍も病気になりやすいとされています。大阪の中学生が格別に病弱ということは考えにくい話ですし、厚労省の外来、入院の児童・生徒数が大阪が特別に多いというデータはありません。

このように、長期欠席の示す不登校の出現率は、このように地域差があります。不登校とは、子どもが学校に合わないことで生じます。このことは、学校教育が子どもに合っていないことを同時に意味します。これほどの出現率の差異が地域によって異なることは本当に憂うべきことであるように思われます。

なお、沖縄はこのところ長期欠席が増えてきています。学力が全国の中で上昇したことが注目されていますが、学力面への過剰なテコ入れが、ときに、長期欠席の増加と関連する場合があると考えています。どこかで無理をしているのではないでしょうか?そこが心配です。また、大阪については、大きな変化はありませんが、最近、兵庫県が若干長期欠席を減少させています。明石市など、一部の地域での不登校対策の成果が出ているのかも知れません。

2014年小学生長期欠席


中学生不登校以外の長期欠席出現率

2014年10月26日