熊本で実施された「災害時のこころのケア研修会」Q&A:17

7月2,3日の2日間にわたって行われた教育関係者向けの研修会で寄せられた被災時のさまざまなご質問への回答です。精神科医の仁木啓介先生 (ニキ ハーティホスピタル理事長)が主に回答をなさいました。また、蛇足になりますが、臨床心理士の小林正幸(東京学芸大学教授)が会場で触れたことや、解説を 書き加えました。順次公開中です。ご活用ください。

Q17 地震後の子どものケアに対して、「触れない方が良い」という意見や「どんどん触れた方が良い」という意見など両極端の意見を聞き、対応がわからなくなってきた。

A: 地震のことに触れる事が重要なのでは無く、出来事を過去の物にしていくこと。何かコントロール不能なものがあれば、それをコントロールできるようにすることが大切なのです。

つまり、心理的、物理的に安定化させること。また、地震に関連することでの、ストレス対処行動を獲得させることが必要です。

また、「自分が悪い人間だから、地震が起こったのだ」など不適切な認知があれば、専門的な対応(EMDRなど)で修正する必要もでてきます。  (仁木)

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仁木先生のお話に補足します。お尋ねについて、一言で言えば、「あえて触れない。しかし、あえて避けることでもない」と思います。

わざわざ災害のことを思い出させるのは間違っています。とくに、被災後数ヶ月は絶対にやめてほしいことです。しかし、紙を与えていたら、自然に絵を描き出すのを止めるのも間違っています。ただし、一部にひたすらその絵を描き続ける子どもも出てきますが、その場合は抑制した方がよいだろうと思います。

しかし、大事なのは、仁木先生がお話になっているように、現在の不快感の表現のままにせず、過去の不快な出来事について、「嫌だった」「恐かった」体験で、「今は大丈夫だよ」と、現在の安定・安心を保障し、未来を保障します。「皆が守るからね」などと、今後の安全を保障することの方が大事なのです。あるいは、「そのときは、こうしようね」と、対処方法を確認します。

注意していただきたいのは、子どもたちが表現を始めるのは、安心・安全が物理的に確保されてからのことです。「地震ごっこ」などはその代表です。でも、同じ避難所でも、「地震ごっこ」を望む子もいれば、それを嫌がる子もいるということです。自己治癒遊びだからと言って、大人が推奨するような遊びなのではありません。<参考:自己治癒遊び地震ごっこについて3>←クリックで記事に飛びます

お子さんの自発的な表現は、安心・安全が感じられてからのことなのです。ですから、お子さんの自発的な表現が起きる前に、わざわざ記憶を思い出させて、表現させることや、語らせるのは間違っています。

まして、被災者同士で、それを行うことも、間違っています。忘れてはいけないのは、支援者がどっしりと安定し、安心した心持ちで、その表現を見守れるのかということです。

とくに驚くふうもなく、お子さんの家庭でのお話の一つを聞くように、やわらかく、「そぉだったんだぁ、恐かったんだねー」と受け止め、「それからどうしたの?・・・避難所に行ったんだー・・・誰か知っている人がいた?・・・それはよかったねぇ」などと今までのことを聞きながら、「今はもう大丈夫になったねぇ、よかったね」「これから、だんだん街が元通りになっていくかもね~、だったらいいね」とゆったりと関わることなのです。

福島で被災した「みどりの東北元気キャンプ」の初年度は7月末のことでした。キャンプの企画では、津波で恐い思いをした子どもが、カヌーやカヤックの体験をします。水に逆らって川を上るシャワークライミングもあります。また、故郷を追われた子どもたちが、木の上に家を作るツリーハウス作りもありました。

これを行って大丈夫かの意見もありましたし、実際に湖を恐がる子どもや、「未来の街」を作品として作る企画などにも、見事に抵抗を示す子どももいました。

しかし、あえてそれを企画し、実施をしたのは、「触れないようにする」ということの方が、「恐々と子どもに接する」ことを意味し、かえって、支援者が緊張するので、よくないであろうということがありました。

加えて、心理スタッフが会場の隅々に目を凝らして、不穏な子どもへの個別の対応方法を適宜支援者たちに伝え続けたこともあります。事前に1日以上かけて支援者の研修会を行い、どのように子どもに接するのかについて、全員が分かった上で、それに臨んだのです。

懸念したそれぞれの活動で、最初に不快感を示した子どもたちも、それぞれの課題を乗り越えていくうちに、自分はそれを「乗り越えられる」との自信を得ていきます。恐さを一つひとつ乗り越えられる体験を味わいます。

しかも、このキャンプでは、大人が押し付けるのではなく、自分自らが活動の種類を選択していくように仕組んであります。教えることはしません。安全のための枠は作りますが、子ども自らがそれを選び取っていくようにしていったのです。

課題に向かわせるのではないのです。子どもが課題に向かうように環境を整えるのです。表現は自然に出てきます。そのときどきで、支援者が的確に関わることができることが全てを決めるのです。

講演会でキャンプのお話をしたのは、そのような意図からでした。(小林)

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