熊本で実施された「災害時のこころのケア研修会」Q&A:11

7月2,3日の2日間にわたって行われた教育関係者向けの研修会で寄せられた被災時のさまざまなご質問への回答です。精神科医の仁木啓介先生 (ニキ ハーティホスピタル理事長)が主に回答をなさいました。また、蛇足になりますが、臨床心理士の小林正幸(東京学芸大学教授)が会場で触れたことや、解説を書き加 えました。順次公開中です。ご活用ください。

Q11:❖生徒により温度差が大きい。被害の大きな地域から、「何ごともなかったようにみえる」市内への通学に負担を感じている生徒がいる。教職員においても同様。
❖高校は広域から集まっているので、避難生活を送っているなど被害が大きかった生徒もいれば、ほとんど地震の影響を受けていない生徒もおり、温度差が大きいです。
❖被災した生徒の中には周りに気を使って気持ちを出せないでいる子もいるのではないか気になっています。表面化しない子どもたちに対してどんなことに注意しておけばよいですか。

 

A:温度差は、心理的に、前述の過覚醒状態やフラッシュバックなどの侵入現象と麻痺や解離の2種類の状態によるもの。物理的に、同じ地区でも実際に地震被害が断層付近とそうでないところの被害の差だったり、被害がある地区と、全くなかった地区の差により温度差は当然出てきます。

物理的な被害を受けた地区に住んでいて、被害が少ない場所に学校があり通学する場合、現実の世界と過去の世界、エジプトのナイル川により東岸と西岸に分けられた土地を生と死に分け、そこを行き来するように、環境のギャップの大きさは、個人に大きな負担とストレスを与え、無力感を植え付け疲弊させてしまいます。

表面化しない子どもは、麻痺や解離を起こしているかもしれません。震災前の表情や行動と比較してみて下さい。喜怒哀楽が減っているかも知れません。何かを恐れ避けているかも知れません。自然と笑顔を取り戻すことが出来るように、安心して楽しめる何かを見つけて上げてください。

東日本大震災では、ミュージシャンが被災地を訪れ、コンサートをしたりしました。熊本地震でも、スターが炊き出しに来てくれて、楽しいビックリだったり、ワクワクを与えてくれました。熊本にはくまモンがいます。くまモンを見ると皆、笑顔になりますよね。とても効果があります。

しかし、不慣れな心理療法を使って、強引に解離や麻痺を単純に取り除いてはいけません、負の気持ちに耐えられなくなり、涙が止まらなくなったりします。解離や麻痺の意味を知って丁寧に扱って下さい。        (仁木)

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津波被害の場合、被災地区とそうではない地区とでは、道一つ隔ててまったく違う世界が展開されていました。内陸地震の場合も、中越地震のときもそうでしたが、隣り合う家でも被害の様相がまったく違うということが起きます。

何が何よりも大変ということは、大規模災害のときはなく、比較などしてはいけないのですが、平穏な地域と被災した地域が隣り合っているような場合や、職場や学校の世界と自宅の世界とがあまりに違っているというときには、大きな困惑と混乱が生じやすいものです。復旧の進み具合が異なることでも、同じようなことが被災地各地で起きているのではないかと思います。

これは、どちらも現実の世界でありながら、片方が夢のような世界に感じられる形で起きてきます。自宅が大変で避難所生活になっている状態から、職場や学校への平穏な世界に入ると、そこでは、避難所での生活が悪夢のように感じられます。平穏であった時期の記憶が鮮明に蘇るからです。それが幸せな夢のような時間に思えます。

職場や学校で、一気に災害前の日常に合わせて生活をすると、どこか嘘のような感覚も襲ってきます。今が夢なのではないかとの感覚が襲ってくるはずです。この夢のような感覚が、軽い「解離」と呼ばれる症状の特徴なのです。

このようなことを感じたら、ご自身の活動にブレーキをかけてください。リラックスできる音楽を聴くことや、身体を動かすこと、ゆっくり呼吸をして、休憩を取ること、ときに年休をとるように先生方はなさってください。楽しいイベントに参加をすることも大事なことです。仁木先生が強調されていることはそのことです。

ですので、被災された地区から通っているお子さんたちに必要なことも同じです。がんばらせないようにしてください。暖かく、柔らかい声かけをお願いします。急がせず、自分のペースを守れる時間と場所を保障していただければと思います。

子どもたち同士は、温度差があることを、先生と同様に意識しています。どのように友達を支えたらよいのかを迷っているお子さんもいるかも知れません。そのようなこともないのかという視点を持っていただければと思います。近くにいるお子さんたちには、励ましあうときに、「がんばれ」「がんばろう」ではなく、「がんばっているんだよ」「がんばっているのを知っているよ」と暖かい声をかけあえるようにしていただければと思います。

そして、先生もそのような声をかけるようになさってください。

今必要なのは、「がんばれ」「がんばろう」ではなく、
「がんばっているんだよ」
「がんばっているのを知っているよ」
という声かけなのだと思います。

仁木先生がお話になっているように、今は、気持ちを引き出そうというときではありません。がんばれないあなたでも、ぼーっとしているあなたでも、それがあなたの「がんばり」であるということを分かって、そのような暖かい声を日々かけることが大切なのだと思います。

それは生徒に対しても、同僚同士でも必要なことだと思います。   (小林)

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